数字は「縦」に並んだ方が読み取りやすい?
数字の処理能力は、それらの文字を空間の中にどう配置するかによって変わります。
しかし、先行研究のほとんどは、右から左、左から右といった「横方向」にのみ焦点を当てており、「縦方向」での配置が、数字の処理能力にどんな影響を与えるかはわかっていませんでした。
そこで研究チームは、配置の異なる数字をどれだけ速く処理できるか調べるため、モニターを使ったテストを実施。
参加者の前に置いたモニターに、1〜9までの数字の中から1組2文字を「横方向」か「縦方向」かに配置してランダムに表示します。
そして参加者には、数字が表示された瞬間に、数の大きい方を手元のジョイスティックで指示してもらい、その反応速度を記録しました。
たとえば、6と8が表示されれば、できるだけ速くジョイスティックを8の方向に向けてもらいます。
参加者の反応時間を正確に測定するため、実験では、高性能な遅延ゼロのアーケード用ジョイスティックを用いました。
その結果、参加者の反応速度は、数字を横方向に並べたときより、縦方向に並べたときの方が速くなることが判明しました。
また、縦方向での配置の方が、正答率(ジョイスティックで数の大きい方を指示できたか)も高くなっています。
特に、数の大きい方を縦方向の上側に表示したとき、参加者はより速く、より正確に数字に反応できていました。
一方で、横方向では、数字の大小を入れ替えても、反応速度に変化は見られていません。
このことから、私たちの処理速度は、数字が左(小さい数)から右(大きい数)の「横方向」より、下(小さい数)から上(大きい数)の「縦方向」に配置されたときに最大化されることが示されました。
これは、数字の処理能力において、垂直方向の優位性を実証した初の研究です。
数字の配列は、私たちの日常にも溢れていますが、興味深いことに、株式市場のフロアや航空機のパネルなど、いくつかのシーンではすでに数字の垂直表示が採用されています。
こうした、刻一刻と変動する相場や、一瞬一秒を争う飛行機の操縦では、数字の迅速かつ正確な認識が必要不可欠です。
もしかしたら人々は、垂直表示の方が数が読み取りやすいことをすでに認識しており、暗黙のうちに取り入れているのかもしれません。
今回の結果は、スマホやPCユーザーが数字情報をすばやく理解し、利用できるようにすることを目指す開発者やウェブデザイナーにとって、示唆に富むものとなるでしょう。
また、教育面での応用も期待されます。
子どもたちに、左から右に向かう数列だけでなく、下から上への垂直な数列を用いて学習させることで、効率的な数字処理の習得や、数学の習熟度が向上するかもしれません。