「大規模な山火事」が遠隔地で巨大な雹が降らせる
シミュレーションの結果、西海岸の山火事と中部で降る巨大な雹には、次の関係があると分かりました。
まず、西海岸で火災が発生すると、膨大な熱が放出されます。
火災によっては、その熱量が「7月の気温の10~40倍」になることもあるのだとか。
この熱によって、アメリカ西部は高気圧になります。
そして同時期にアメリカ中部で嵐が発生している場合、中部全体が低気圧に包まれます。
これにより西部と中部で大きな気圧差が発生。
西部の空気が中部に流れ込むようになり、もともと西から東に流れている西風がさらに強化された状態になるのです。
また火災によって、熱以外にも煙の粒子が放出されます。
この粒子が強化された西風に乗ってアメリカ中部に運ばれていき、その途中では、大気中の湿気も一緒に運ばれます。
その結果、アメリカ中部上空では、煙の粒子を核にして水蒸気が凝縮。
嵐が強くなると凝縮した水滴が凍り、雹を形成し始めるのです。
嵐の中では、強い上昇気流によって雹が繰り返し舞い上がることになり、その過程で冷却された水滴を集め続け、次第に大きな雹を形成していくようです。
最終的には、上昇気流に乗り切れないほど重くなった巨大な雹が、地上に降り注ぎます。
西海岸の火災と中部の嵐が同時期に発生することで、嵐に雹が追加されていたのです。
研究チームによると、アメリカ中部で発生した小規模な火災と嵐でも同様の現象は起こるようです。
しかし、それほど大きな規模には発展しません。
アメリカ西海岸で発生しやすい「大規模な火災」こそが、巨大な雹を生み出す原因だったのです。
アメリカの環境非営利団体「C2ES」の調査によると、近年アメリカ西部では、気候変動による乾燥で大規模な火災が発生しやすい状態にあるとのこと。
1984年から2015年の間では大規模な火災の件数が2倍に増加しているほどです。
そのため今後、「西海岸の大規模火災が遠隔地で巨大な雹を降らせる」という事例が増えていくかもしれません。
研究チームは、他の地域でも同様の関連が見られるか調査し、将来の天気予報に役立てる予定です。
「巨大な雹が降る」ことを予測できるなら、損害を最小限に抑えることができるでしょう。