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2022年・世界の医療を進展させた「生物・医学の研究報告」ベスト7

2022.12.30 Friday

コロナ禍の出口が見えそうで見えない2022年。

そんな微妙な年を振り返ってビックリする生物医学系のニュースをランキング形式で紹介したいと思います。

今年のランキングも5万年前の染色体たちの間に起きた超古代の世界大戦、友達を強制的に変更する技術、脳細胞に咲く毒の花、抗うつ薬のマウスに対する効果の顕著な男女差、オスだけ殺す毒「オスカル」、犯罪現場の猫に潜む人間の、そして実験参加者全てのがんを寛解させた驚きの成果などなど、粒ぞろいのニュースを取り揃えています。

それではまずは第7位の紹介です!

2022年「ビックリした生物医学ニュース」ランキングベスト7

第7位:【ミクロの男女戦争】5万年前人類はX染色体の大攻勢で女性しか生まれなくなっていた!

第7位:【ミクロの男女戦争】5万年前人類はX染色体の大攻勢で女性しか生まれなくなっていた!
第7位:【ミクロの男女戦争】5万年前人類はX染色体の大攻勢で女性しか生まれなくなっていた! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

まず最初に紹介するのは、最新科学が解き明かす染色体同士の血塗られた歴史です。

デンマークのオーフス大学(Aarhus University)で行われた研究によって、今から5万年前に出現した変異X染色体はY染色体を持つ精子を殺し、女性だけしかうまれないように誘導していた可能性が示されました

人間の性別はY染色体を運ぶY精子が受精すれば男性に、X染色体を運ぶX精子が受精すれば女性がうまれてきます。

しかし5万年前に東アジアで出現した変異X染色体はY精子を選択的に殺し女性だけうまれるようにすることで、X染色体を1本しか持てない男性よりもX染色体を2本もてる女性を増やし、人類集団での勢力拡大を狙ったようです。

5万年前にタイムトラベルできれば、女性ばかりの集落がいくつもあったかもしれません。

【ミクロの男女戦争】5万年前人類はX染色体の大攻勢で女性しか生まれなくなっていた!

第6位:マウスの脳に光ファイバーを刺し込んで友達を変更することに成功!

光遺伝学を用いた脳細胞の刺激例
光遺伝学を用いた脳細胞の刺激例 / Credit:J. BARNEY BRYSON et al . Optical Control of Muscle Function by Transplantation of Stem Cell–Derived Motor Neurons in Mice (2014) . Science

次に紹介するのは「トモダチ」を変更する脳改造を受けたマウスたちの話です。

米国デューク大学(Duke University)で行われた研究によれば、マウスの脳の8カ所の電気活動を測定することにより、社会性の源となる脳回路と制御コードを発見した、とのこと。

また発見された脳回路を光で強制的に活性化することで、マウスの社会性を変更し、他のマウスに対する友好度を制御することにも成功しました

同様の回路は人間にもある可能性が高く、上手く制御すれば、嫌いな相手を好きにさせるなど、コミュニケーションの円滑化が実現するかもしれません。

マウスの脳に光ファイバーを刺し込んで友達を変更することに成功!

第5位:脳細胞に咲く「毒の花」がアルツハイマー病の真の原因と判明!

第5位:脳細胞に咲く「毒の花」がアルツハイマー病の真の原因と判明!
第5位:脳細胞に咲く「毒の花」がアルツハイマー病の真の原因と判明! / Credit:NYU, COURTESY OF SPRINGER-NATURE PUBLISHING

第5位にランクインしたのは、アルツハイマー病の真の原因に迫る研究です。

米国のニューヨーク大学(NYU)で行われたマウス実験によって、長年アルツハイマー病の原因と考えられてきたアミロイドベータの蓄積は、真の原因が起こした副次的な結果にすぎない可能性が示されました

研究ではアミロイドベータが蓄積するより「かなり前」の段階で、既にマウスの脳細胞が麻痺状態にあり、「毒の花」と呼ばれる異常な構造が発生している様子が示されています。

また花の正体はは老廃物を大量に溜め込んだ細胞の「ゴミ回収車(オートファゴソーム)」であることが示されました。

研究者たちは、アルツハイマー病になったマウスたちの脳では、アミロイドベータが蓄積する前に、脳細胞のゴミ処理システムが機能しなくなっていると結論しています。

脳細胞に咲く「毒の花」がアルツハイマー病の真の原因と判明!

第4位:研究者の性別でマウス実験の「抗うつ剤」効果が変わると判明!

第4位:研究者の性別でマウス実験の「抗うつ剤」効果が変わると判明!
第4位:研究者の性別でマウス実験の「抗うつ剤」効果が変わると判明! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

第4位は、医学研究を根底から覆しかねない衝撃のニュースです。

米国のメリーランド大学(University of Maryland)で行われた研究によれば、強制的にうつ状態にしたマウスに抗うつ剤「ケタミン」を投与する場合、研究者が男性である場合にのみ治療効果を発揮することが判明した、とのこと。

一方で、女性の研究者が同じようにケタミンを投与しても、マウスの抗うつ効果があまり得られないことが示されました。

研究者の性別が実験結果に違いを与えていたという結果は、今後の動物実験の手順に大きな影響を与えると考えられます。

また気になる原因は、男性研究者が発する臭いにマウスがストレスを感じていたからでした。

既にうつ状態なのに追加でストレスを感じれば薬の効き目も出にくくなると考えられがちですが、実際には、特定のストレスが特定の抗うつ薬の効果を高めることもあるようです。

研究者の性別でマウス実験の「抗うつ剤」効果が変わると判明!

第3位:東大がオスだけを狙って殺す細菌タンパク質「Oscar(オス狩る)」を発見!

第3位:東大がオスだけを狙って殺す細菌タンパク質「Oscar(オス狩る)」を発見!
第3位:東大がオスだけを狙って殺す細菌タンパク質「Oscar(オス狩る)」を発見! / Credit:wikipedia

第3位にランクインしたのは、オスだけ殺す毒タンパク質「Oscar(オス狩る)」についての発見です。

日本の東京大学で行われた研究によれば、チョウやガに感染する細菌「ボルバキア」が、オスだけを狙って殺す仕組みを解明し、原因となるタンパク質「Oscar(オス狩る)」が明らかになった、とのこと。

ボルバキアが感染したアワノメイガでは、オスは卵や幼虫の段階で死んでしまうようになり、(感染している)メスだけしか成長しなくなってしまいます。

また興味深いことに、「オス殺し」を行うボルバキアを抗生物質などで排除すると、今度はその種のメスが全滅してしまい、オスだけしか残らないことが知られています。

つまり、このタイプのボルバキアに1度感染してしまえば、体内のボルバキアが死滅したとしても、正常な生殖が不可能になってしまうのです。

恐ろし気な細菌ですが、もし上手く使いこなせるようになれば、次世代の性操作技術の開発につなげられると期待されます。

東大がオスだけを狙って殺す細菌タンパク質「Oscar(オス狩る)」を発見!

第2位:新しい科学捜査!「猫の毛」には現場にいた人間のDNAが残ると判明!

第2位:新しい科学捜査!「猫の毛」には現場にいた人間のDNAが残ると判明!
第2位:新しい科学捜査!「猫の毛」には現場にいた人間のDNAが残ると判明! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

第2位は、刑事ドラマの脚本家や推理小説家に嬉しいニュースとなっています。

オーストラリアのフリンダース大学(Flinders University)で行われた研究によれば、猫の毛は犯行現場にいた人間のDNAを含んでいる可能性があることが判明した、とのこと。

猫の毛から採取されたDNAを分析することで、事件にかかわった関係者たちの行動を立証する証拠できるかもしれません。

今回の研究は、家のペットたちが人間のDNAをどれだけ毛に含んでいるかを調べた最初の研究となっています。

調査にあたってはまず、猫の右側の毛を綿棒で2回軽くなで、DNAの検出を試みました。

綿棒で2回毛をなでただけでは、人間どころか猫のDNAすら採取できるか怪しいと思う人もいるかもしれません。

しかし実際に調べてみたところ、2回撫でただけの綿棒から80%の確率で人間のDNAが検出されました。

また研究に参加した猫の70%から、ある程度、個人の識別が可能なほどのDNAが回収できたのです。

もしかしたら未来の警察官たちは「証拠品」として事件現場の猫たちの確保に追われることになるかもしれません。

新しい科学捜査!「猫の毛」には現場にいた人間のDNAが残ると判明!

第1位:実験的治療で参加者全員の直腸がんを完全消滅させることに成功!

第1位:実験的治療で参加者全員の直腸がんを完全消滅させることに成功!
第1位:実験的治療で参加者全員の直腸がんを完全消滅させることに成功! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

第1位は「いつかそんなニュースがあったいいな」がついに実現した研究です。

米国のメモリアル・スローン・ケタリング癌センター(MSK)で行われた研究によれば、臨床試験に参加したすべての直腸がん患者から、がんを完全に排除することに成功した、とのこと。

これまで様々な抗がん剤が作られてきましたが、被験者全員のがんを完全消滅(寛解)させたのは今回の例が世界ではじめてとなります。

この臨床的な成功は、がんを体の部位ごとに「〇〇がん」「✕✕がん」として扱うのではなく「ミスマッチ修復欠損がん」のように、がん細胞の遺伝子タイプに重点を置くことの重要性を示しています。

なお気になる薬のお値段は10mlで1,1201ドル(約146万円:1ドル130円換算)とのこと。

実験的治療で参加者全員の直腸がんを完全消滅させることに成功!

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