「致死率99%の狂犬病」のワクチン接種が嫌われるかも!?
イヌ用ワクチンに対する懐疑的な見方は、狂犬病のワクチン接種にも影響を与える可能性が高いと言えます。
狂犬病ウイルスは、人間を含むすべての哺乳類に感染し、脳で繁殖しやすいのが特徴です。
そのため感染すると知覚異常や痙攣、麻痺、興奮などを生じさせ、最終的には脳の中枢神経を破壊してしまいます。
狂犬病は、発症後の致死率が99%であり、毎年5万9000人を殺している人類の身近ある「最悪のウイルス」の1つです。
ただし、人間への感染経路の99%はイヌからの咬み傷などであり、イヌの予防接種や咬まれた後のワクチン接種で発症を未然に防ぐことができます。
この恐ろしいウイルスの存在が、人類にとって致命的ではない理由は、ワクチンによる対策が成功しているからと言えるでしょう。
また研究チームは、「どの薬、治療法、ワクチンにも副作用のリスクは常にあるが、狂犬病ワクチンのリスクは非常に低い」と述べています。
世帯の45%が犬を飼っているアメリカでは、多くの州で狂犬病の予防接種が義務付けられています。
それでも、今回の研究結果が示すように、ワクチン全般に対する懐疑的な見方によって、狂犬病ワクチンの接種義務を怠る人が増加する恐れがあります。
もともと狂犬病ワクチンが入手しにくい発展途上国ではなおさらでしょう。
日本に住む私たちとしても、日本や海外で「ワクチン嫌いな飼い主のペット」と接する機会があるため、他人事ではありません。
マット氏が指摘するように、「今回の調査で示された波及効果は、ヒト用ワクチンの安全性と有効性に対する信頼を回復することの重要性を浮き彫り」にしました。
飼い主ひとりひとりが科学的な根拠に基づいて、愛犬への予防接種を行うことは非常に大切です。
加えて、ワクチンそのものに対する信頼を回復することも、アフターコロナの世界で急務だと言えるでしょう。