換気が睡眠の質を向上させると判明
ファン氏らは寝室の換気と睡眠の質の関係を調査するため、35人の参加者(27~64歳)を対象に、4週間の介入研究を行いました。
最初に参加者たちは、これまで通りの睡眠を1週間続けます。
寝室の換気に対する介入はなく、この期間で研究チームは、各参加者たちの寝室の自然条件(換気量、空気の質、睡眠パターンなど)を確立できました。
その後研究チームは、3週間にわたって寝室の換気量を変更するという形で、一連の介入を行いました。
この間、寝室の状況は継続的に監視されており、CO2濃度、粒子状物質(PM)レベル、温度、湿度などのデータが得られました。
また参加者の睡眠の長さ、深い睡眠と浅い睡眠の割合、目覚めた回数なども調べられています
その結果、換気量を増やすことで参加者たちの睡眠の質が向上すると分かりました。
各参加者の換気を低設定から中設定や高設定に変更すると、深い睡眠の増加、浅い睡眠の減少、目を覚ます回数の減少が見られたのです。
例えば深い睡眠の割合は、換気が低設定だと平均12.6%でしたが、中設定にすると平均17.5%にまで上昇しました。
では、これら睡眠の質の違いを生じさせた要素とは一体何だったのでしょうか?
研究チームは、実験の中で、換気がCO2濃度に大きな影響を与えることを発見しました。
換気量が少ないと、CO2濃度が大幅に高くなっていたのです。
また微小粒子状物質(PM2.5)の量も換気によって減少しました。
これらのことから、換気によってCO2濃度を下げることが、睡眠の質を向上させるカギだと考えられそうです。
今回の結果からファン氏は、「寝室のCO2濃度を1000 ppm 未満にする必要がある」と述べていますが、「正確な数値を出すにはさらなる研究が必要だ」とも付け加えています。
もちろん空気中の汚染物質も多すぎるなら、睡眠の質が低下する可能性があります。
空気清浄機ではCO2濃度を下げられないので、睡眠の質を向上させたいなら空気清浄機ではなく、やはり「換気」すべきでしょう。
換気が低設定の場合でも、PM2.5はWHO基準値よりも低下できることができたため、換気に伴う温度や湿度の変化が気になる場合は、低設定の換気を実施するのが良いかもしれません。
睡眠の質を向上させるために、効果な設備を導入する必要はないようです。
誰もが、ただ「窓を開ける」「換気扇を回す」といったシンプルで安価な方法で実践できるのです。
寝付きの悪さや、夜中頻繁に目覚めるなど、睡眠の質が気になっている人は、まずは部屋の換気から始めてみるといいかもしれません。