ベンヌのサンプルからリン酸塩を発見!かつて「海をもつ惑星」の一部だった!?
分析の結果、ベンヌのサンプルには、粘土などの鉱物に閉じ込められた大量の水分が含まれていると判明。
また炭素、窒素、硫黄、リンも豊富に含まれていました。
さらにラウレッタ氏によると、小惑星ベンヌのサンプルは、隕石のサンプルと比べて貴重なのだとか。
地球に落ちてくる隕石のほとんどは小惑星のかけらです。
しかしそれら隕石は、地球大気圏を経て激しい落下を経験した破片であるため、そのサンプルから隕石の起源を特定することは容易ではありません。
一方、今回分析が進んでいる小惑星ベンヌのサンプルには、これまでの隕石サンプルには見られなかった物質が豊富に存在していることが分かっており、その起源を探るための「最高の手がかり」だと言えます。
そして、それら特異な物質の中でも、ラウレッタ氏が特に注目しているのが、「リン酸塩」です。
リンを含むリン酸塩は、DNAやRNA、細胞膜など生命を形作るものにとって必要不可欠な物質であり、これまでにも「地球以外の海を持つ可能性のある天体」で見つかっています。
例えば土星の衛星エンケラドゥスには内部海が存在していると考えられており、探査機によってリン酸塩が検出されてきました。
そのため、小惑星ベンヌのサンプルからリン酸塩が発見されたという事実は、非常に興味深いものです。
ラウレッタ氏は、「小惑星ベンヌは、古代の海洋世界の断片である可能性があります」とコメント。
地球に接近する小惑星ベンヌが、かつては「海をもつ天体」の一部だったかもしれないというのです。
もちろん、このアイデアは、現時点での単なる可能性の1つに過ぎず、さらなる分析と研究により、真実を明らかにしていく必要があるでしょう。
また小惑星ベンヌは、おそらく火星と木星の間の小惑星帯で形成されたと考えられています。
そのためベンヌは、それらの小惑星やそこからもたらされる隕石の「点と点を結ぶ存在」となる可能性もあります。
詳しい分析結果は、2024年3月にアメリカのテキサス州で開催される「第55回月惑星科学会議(Lunar and Planetary Science Conference)」で発表されます。
「地球に衝突するしれない」と私たちを賑わせてきたベンヌは、今後一層注目の的となりそうです。