「精液の質が落ちてる」ってどんな状態?
この研究の背景として、男性の精液の質が世界的に低下傾向にあることが問題視されていました。
過去50年間で精子の質が顕著に落ちており、その劣化速度は2000年以降でさらに加速していると指摘されています。
しかし「精液の質が落ちている」と口で言うのは簡単ですが、具体的にどのような状態を指すのでしょうか?
それには次のようないくつかのポイントが挙げられます。
精子の数の減少
・正常な精子の数は1mlあたり約1500〜1600万個以上ですが、これを下回ると「精子濃度が低い」とされます。
精子の運動能力の低下
・正常な精子には前方にすばやく泳ぐ能力がありますが、この運動性が低下すると、精子が卵子に到達するのを妨げます。
精子の形の異常
・正常な精子は「頭部・中片部・尾部」と各部位の特定の形状を持っていますが、これらの形に異常があると、受精能力が落ちます。
精液量の減少
・1回あたりの正常な射精量は1.4ml以上ですが、これを下回ると精液量が少なく、受精能力が落ちます。
こうした異常はどれも「受精能力を低下させて、妊娠確率を下げる」という結果につながるものです。
現在、世界の男女カップルの約15%が不妊に悩んでいますが、その症例の50%以上が男性側の「精液の質の低下」に要因があるとされています。
このまま世界中の男性の精液の質が落ち続けると、新たに生まれてくる子供の数が激減し、ゆくゆくは「人類の絶滅」という最悪のシナリオが待ち受けているかもしれません。
この現状を受けて、専門家たちは精液の質が落ちている原因の特定を急いでいます。
その原因としては今のところ、喫煙やストレスの増加、環境汚染、食品に含まれる化学物質の摂取量の増加などが挙げられていますが、はっきりこれと特定はされていません。
その一方で近年の研究では、「肥満」との強い関連性が指摘され始めています。
そこで研究チームは今回、男性の肥満度に注目し、BMIと精液の質との関連性を新たに調べてみました。