がん治療が「日帰り」で終わる世界が来る
ErSO-TFPyのように、乳がん細胞を一気に破壊する薬の登場は、これまでのがん治療の常識を塗り替える潜在力を秘めています。
何年も服用を続けなければならないホルモン療法の負担を軽減し、副作用による生活の質の低下を最小限に抑えられれば、患者さんの治療継続率も上がり、再発予防の効果がより確かになる可能性があります。
しかし、この研究はあくまで動物実験段階における結果であり、ヒトの体内で同じ現象が起こるかどうかは未知数です。
どれだけ効果的にがんを減らせるのか、どの程度の用量が安全か、他の臓器に悪影響はないか──大規模な臨床試験と多角的な検証が求められます。
さらに、患者さんによってはエストロゲン受容体が変異していたり、HER2など他の分子が関与する複雑なタイプの乳がんを抱えている場合もあります。
そうした多様な症例に対して、この新薬がどこまで有効なのかも慎重に見極める必要があるでしょう。
いずれにしても、わずか1回の投与で乳がんを「撲滅」に近い形で抑え込むというアイデアは、がん研究のなかでも注目に値する大きな成果です。
もしかしたら未来のがん治療は「日帰り」で完了するようになるのかもしれませんね。