ソムリエになれるのは人間だけじゃない?
ワインの香りを嗅いで銘柄やブドウの品種をぴたりと言い与えるのは、経験を積んだソムリエでも難しい技術です。
ワインの香りは数百種類の化学物質の組み合わせによって構成されており、その微妙な違いを嗅ぎ分けるには訓練が必要です。
人間は視覚を重視する生き物ですが、犬やラットのような動物は、より嗅覚を頼りに生きています。
例えば、ラットは約1200種類の機能的嗅覚受容体を持っており、これは人間の約3倍です。
しかし、これまでの研究では、言語を持たない動物が「ワインの品種」というような複雑なカテゴリーを嗅覚だけで識別できるのかどうかは分かっていませんでした。
研究チームは、この疑問に答えるため、ラットにワインの識別能力があるかどうかを検証しました。

今回の研究では、9匹のオスのラットを用いて、ワインの嗅覚識別実験を行いました。
(メスは発情周期による嗅覚の変化を避けるため除外)
嗅ぎ分けの対象となるのは、2種類の白ワイン。
1つ目は、ライン川流域を原産とする白ワイン用のブドウ品種を使った「リースリング」。
2つ目は、フランスのボルドー地方を原産地とする白ブドウを使った「ソーヴィニヨン・ブラン」です。
実験ではまず、それぞれのラットに、どちらか一方のワインを「報酬あり(S+)」、もう一方を「報酬なし(S−)」として学習させます。
ラットはケースに開けられた小窓に鼻を突っ込むことでワインの香りを嗅ぎ、報酬あり(S+)ワインに対してレバーを押すと食べ物の報酬をゲットできます。

訓練の結果、驚くべきことに、9匹すべてのラットがリースリングとソーヴィニヨン・ブランを識別することに成功したのです。
訓練されたワインの識別率は94%と非常に高い精度を示していました。
さらにチームはその後、訓練時には使っていない別種の白ワインでも新たに嗅覚テストを実施。
すると訓練時より成績は劣るものの、未経験の新しいワインでも65%の確率で識別できることが示されました。