「キティ・ジェノヴィーズ事件」は序章にすぎない? 心理学入門書の「ウソ」を暴く

あなたは、1964年にニューヨークで起きた「キティ・ジェノヴィーズ事件」をご存知でしょうか?
深夜、自宅アパート前で女性が襲われた際、「38人もの目撃者がいたのに、誰一人として助けようとせず、通報すらもしなかった」とされる事件です。
この衝撃的な話は、「困っている人がいても大勢いれば見て見ぬふりをしてしまう」という「傍観者効果」や「責任の分散」を説明する、心理学の入門書では頻繁に取り上げられる、象徴的な事例として語り継がれてきました。
多くの人が、この事件を通して初めて心理学の面白さに触れたかもしれません。
まるで、人間の冷たさや集団の恐ろしさを象徴する、揺るぎない真実のように思われていました。
しかし、その「定説」は実は大きな誤解に基づいていたのです。
事件から時が経ち、詳細な検証や新たな証言によって、「38人もの冷たい傍観者」という初期の報道が、いかに不正確であったかが明らかになってきました。
実際には、事件の全体を正確に目撃していた人はごくわずかで、多くの住民は悲鳴や物音を聞いただけで、何が起きているのかを正確に把握できていなかったことが後の調査で分かっています。
また、少なくとも2人は警察へ通報していたことが記録から確認されました。
つまり、あの衝撃的な「キティ・ジェノヴィーズ事件」は、メディアによって作られた側面が大きかったと言えます。
まさか、心理学の「教科書」に載っているほど有名な話が、事実と異なっていたことをはじめて知った方はショックを受けられるかもしれません。
しかし、歪曲されている事実はこれだけではありません。
実は、キティ・ジェノヴィーズ事件はほんの一例にすぎず、心理学の入門書には、すでに学術的には否定されていたり、根拠があいまいだったりする情報が、今もこっそり潜んでいることが分かっているのです。