背が高い方が有能?経済学の「身長プレミアム」

背の高い大人は、平均して高い賃金を得たり、管理職に就く割合が高かったりする。
このような傾向はアジア圏ではあまり報告されませんが、特に欧米において顕著な傾向が見られており、「身長プレミアム」と呼ばれる現象として、経済学や社会科学で古くから知られてきました。
しかし、これがいつ、どこで生まれるのかはよく分かっていませんでした。
今回の研究は、「すでに学齢期の成績に小さな差が出ているのではないか」という仮説からスタートしました。
ニューヨーク市では、全校共通で標準化された英語(米国においての国語)と算数の学力テストが毎年実施されると同時に、児童の身長・体重測定(Fitnessgram)も行われています。
研究チームはここに注目し、身長の測り方を三通りに整理しました。
第一に、同じ学年・同じ学校・同性の平均からどれだけ高いかを示す「学年内身長偏差(Zスコア)」。
第二に、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の成長曲線に基づく「年齢別偏差」。
第三に、クラスでの背の順番を百分位ランクで表した指標です。
一方、学力テストの結果も標準化され、学年ごとの平均点をゼロ、標準偏差を1とすることで、学年間や科目間で比較しやすくしました。
もちろん、身長と成績の関係を見るだけでは十分ではありません。
ただ単純に比較しても、貧困率や家庭で英語を話す傾向など、背景要因が入り混じってしまい、もっとも影響を比較したい身長の影響が隠れてしまいます。
そのため研究者たちは、家庭の経済状況、家庭内言語、障がいの有無、誕生月(学年内での年齢差)など十数項目を統計モデルに投入し、それぞれの影響をできるだけ取り除きました。
さらに、同じ子どもを何年にもわたって追跡する「パネルデータ」の強みを生かし、子ども固有の「持って生まれた資質」、たとえば幼児期の栄養状態や家庭環境の違いを固定効果として差し引きました。
これにより、「その年に背が伸びた子は、成績も伸びたのか?」という視点から、より純粋な影響を見ることができたのです。
ではこの研究の結果はどうなったのでしょうか?