ムササビの滑空術がドローンに「急減速」「瞬時の方向転換」をもたらす
このムササビドローン最大の特徴は、「必要なときだけ翼を広げることができる」という点です。
普段はプロペラで飛行し、スピーディーかつ機動的に動く一方、急減速したいときには両脇に収納された“膜状の翼”をパッと展開します。

この翼は、ムササビの滑空膜を模して作られており、素材は柔軟性と耐久性に優れたシリコンが選ばれました。
左右それぞれの翼にはサーボモーター駆動の4連リンク機構が搭載されており、滑らかかつ瞬時に展開される仕組みになっています。
また飛行中に翼を展開させる際、同時に機体を後方に少し傾けながら空気を受け、翼全体で空気抵抗を得るようにします。
こうするこで、まるで空中でブレーキをかけたかのように減速できます。

この一連の動作とその応用によって、従来のドローンでは難しかった「狭い空間での急停止」「瞬時の方向転換」が可能になりました。
さらにこのムササビドローンは、翼を活用して滑空もできます。
たとえば高所から滑空して着地すれば、プロペラを使わずに省エネルギーで着陸でき、バッテリーの節約にもつながります。
そして最新のAIベースの翼協調制御(TWCC)システムにより、操縦性は格段に向上しました。
実際、コンピュータモデルによるシミュレーションでは、ドローンが森林のような障害物コースを90.5%の成功率で飛行できると分かりました。
一方、従来のドローンにおける成功率は10~20%ほどでした。

このように、ムササビドローンは「ムササビの滑空術」を見事に機械へと再現した、バイオミメティクス(生物模倣技術)の最前線を体現する存在なのです。
では、今後このムササビドローンはどんな場面での活躍が期待されているのでしょうか?
たとえば、森林や建物内などの障害物が多い環境での調査・探索、自然災害時における迅速な偵察飛行、動物観察や環境モニタリングのような静かで滑らかな飛行が求められる場面です。
ムササビが滑空して森を渡るように、このムササビドローンも未来の空を自由に駆け抜ける存在になるかもしれませんね。