「私はどこで生まれるのか?」――39研究機関が7年かけて探した「意識の座」
「私はどこで生まれるのか?」――39研究機関が7年かけて探した「意識の座」 / Credit:Canva
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「私はどこで生まれるのか?」――39研究機関が7年かけて探した「意識の座」 (3/3)

2025.05.02 22:00:26 Friday

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勝者なき勝負が遺した「決着より大切なもの」

勝者なき勝負が遺した「決着より大切なもの」
勝者なき勝負が遺した「決着より大切なもの」 / Credit:Canva

この「勝者なき勝負」は、むしろ意識研究の新たな出発点と捉えられています。

なぜなら、研究そのものが今後のモデルケースとなる画期的な方法論だったからです。

通常、研究グループごとにバラバラの実験系で競い合うところを、今回は大規模でオープンな協力体制がとられました。

実験計画や解析手順は事前に登録され、複数のラボで再現可能なよう標準化され、結果のデータは誰もが検証できるよう公開されています。

理論の提唱者自身が一歩引き、データが語るままに従おうという透明性と中立性が貫かれたのです。

「今回の結果は、たとえ確立したアイデアでも厳密にテストされねばならないことを思い知らされる謙虚な教訓です。本気で意識を解明したいなら、我々はデータに主導権を握らせねばなりません」とメローニ氏は述べています。

この姿勢こそ、本研究最大の遺産と言えるでしょう。

さらにこのプロジェクトは、膠着していた理論間の議論を前進させました。

統合情報理論もグローバル神経ワークスペース仮説も今回の結果を踏まえて理論の練り直しが迫られていますが、それだけでなく他の斬新な仮説にも光が当たるかもしれません。

現在、意識の理論は大小合わせて20以上あると言われます。

Cogitateチームは「今回はそのうち2つをテストしたに過ぎない。

この豊富なデータセットを公開するので、他の研究者も活用して分野を前に進めてほしい」と呼びかけています。

実際すでに第2弾となるさらなる大規模実験が準備中で、今度は動物モデルやより高精細なスキャンによる検証も検討されています。

こうした継続的で開かれた取り組みにより、意識の謎解明は確実に加速していくでしょう。

最後に、本研究の成果は学術的な意義に留まりません。

意識を生み出す脳内メカニズムが分かれば、事故や病気で意識があるか判別できない昏睡状態の患者さんに対して脳スキャンで「潜在的な意識の兆候」を探るような技術にもつながります。

実際、昨年報告された研究では、意識がないように見える患者の約4人に1人に脳スキャンで隠れた意識活動が検出されたという結果もあります。

意識の所在がより正確に特定できれば、こうした閉じ込められた意識をいち早く見抜き、治療やケアに役立てられる可能性があります。

人類が自らの意識を完全に理解するまでの道のりは、まだ続きます。

ですが今回、科学者たちは互いにしのぎを削るのではなく力を合わせることで、意識の謎に一歩迫ることができると示しました。

その成果として、意識が隠れていられる場所は少しずつ狭まってきています。

今後さらに多くの目がこのデータに注がれ、新たな実験が積み重ねられることで、「心と脳」をめぐる長い探求は新たな段階に入っていくでしょう。

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「私はどこで生まれるのか?」――39研究機関が7年かけて探した「意識の座」 (3/3)のコメント

ゲスト

異端を認めるのが科学と宗教の一番の違いだとあるノーベル賞学者がインタビューで答えていましたね。
そのインタビュー記事、コロナが流行る直前だったんですよね、その後に起きたことを見て、「ああ、科学は宗教になったんだな」って実感しました。

    ゲスト

    分からないことを分からない、と理解する。
    の言い換えですね

    科学は宗教になったんでしょうか
    たとえば不確定さに対して信念で対処することを宗教と言うならば、政治にはもとからそういう部分がありますね
    ある一つの科学的意見が正しい、という信念で世を動かすこともあったかもしれません

    ゲスト

    それを云うなら、経済が宗教になったのでは?経済システムを止めない為に、科学を含め我々の全ては犠牲となった。そして、つけ加えるなら、宗教の中でも異端を認める者も居ます。前教皇の様に。

謎発見機

この研究の結果、胎児(おそらく資格が有効に機能していない段階の)には意識が無いかもしれないという洞察が得られたとか言い出されないこと祈ります。神経科学て、時折、包括的な協働を見落としているきらいがあるのが玉に瑕ですよね。こんなことやるなら、先に、おそらく現行の仮説が肯定しきれないであろう植物の意識の有無とかを検討してした方が本質的な気がしますね。つくづく。

ゲスト

工学系だと、設計する組織と評価する組織(と品質管理する組織)が別にあってNGな製品が世に出るのをある程度抑えられるんだが、
多くの学問では、この辺が蔑ろになってるってのはまあ感じるかな

評価技術で大事なのはとらわれない目で物事を見ることだと思うが、これは難しくて優秀でも我の強い人では全く身につかなかったりする
とらわれない目ってのは、中立とか、相手の主張をわかってあげるって意味じゃないよ
むしろ逆で、自分も相手も全部間違ってる前提(=全否定)で始めて、いろんな切り口で診断して事実をすくい上げていく
これは、観念的にわかんない人はわかんないと思う

何か関係ない話になってしまったが

ゲスト

誤字脱字多いし側頭や頭頂含めて後部とか言ってもなんのことか分からない
そもそも画像を使ったタスクであればビジュアルコーテックスに詳細な反応があるのは当たり前だし
音に対するタスクもやるべきだろう
音であれば側頭から前部になる
ソマトセンサリも側頭から頭頂になる
これも後部とは言えない

意識の座といえば島皮質も重要だろうし
皮質をコントロールするサブコーデックスの存在も重要だ

そもそも最後のページに意識に関する説は20ぐらいあり
その2つを試しただけという話なのに
最初に2大仮説を勝負させて意識の座を決定するみたいな文章にするのはどうなのか

この筆者は物理系の記事に比べると脳科学は雑なので他の人に変えたほうが良いのではないか

abc

脳をいくらスキャンしても実験的な手法で意識の座は判定不可と思われます。
なぜなら、脳もこの宇宙に存在している以上は、どこまでいっても物理法則に従って機械的に運動するシステムに過ぎず、意識は脳の物理運動の結果としてなぜか付随するおまけの様なものと捉えるしかないからです。
従って、脳がどんな信号を返したとしてもそれは物理法則によって規定された必然的な反応に過ぎず、その信号が意識の発生と関係しているなどうかを判別する方法はありません。

ゲスト

個人的に我々の意識とは映写機に投影された映像のようなもので
映写機にセットされたフィルムこそが我々の本体と言える部分ではないかと思うが、どうなんだろうか
つまり記憶を保管する部分こそが本体で、そこから情報を引き出すことで自分を自分とする
仮に記憶の消失が生じてもフィルム自体が同じフィルムであれば、それで赤の他人とはならないと
人間の核と言えるものは脳の中でも何なのであろうか

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