「脳の再教育」が慢性疼痛の痛みを和らげると判明
実験の結果、オンラインプログラムを受けた患者グループでは、従来の標準治療を受けた患者グループと比べて、痛みの強度が軽減し、感情調整能力が有意に改善されました。
また、睡眠や生活の質、社会的活動への参加も向上するという効果が確認されました。
ある患者は、痛みの軽減のために使用していたモルヒネの摂取量を減らすことさえできました。
これらの成果は、単なる「気分の改善」にとどまらず、実際の神経活動や脳構造に変化が起きていることを示唆しています。

慢性疼痛の患者では、脳における感情や痛みをコントロールする機能のバランスが崩れ、痛み信号を抑制できなくなってる可能性があります。
そのため今回のオンラインプログラムは、この機能を再び正常な状態に近づける“脳のリハビリ”のようなものだと考えられます。
ただし、この研究にも限界はあります。
対象人数が89名と少数だったことや、対象が英語圏で文化的要因が影響している可能性、さらに痛みの種類(腰痛、線維筋痛症など)にばらつきがあったことが挙げられます。
これらを踏まえ、研究チームは2026年に300人以上を対象とする試験を計画しており、さらなる検証が進められる予定です。
それでも今回の結果は、これまで「治らない」と思われていた慢性疼痛に対して、薬物に頼らない新たな治療戦略として期待されるものです。
これからは、薬や注射だけでなく、「脳を再教育」ことで痛みを克服する時代がやってくるのかもしれません。