なぜシャチ親子の移送は進まないのか
実はマリンランドの運営側は、すでに複数回、シャチ親子と同施設にいる12頭のイルカたちの移送を試みています。
2024年2月には、スペイン国内の2つの施設に移送する申請を提出しましたが、スペイン政府は「施設がシャチやイルカの保護に適していない」としてこれを拒否しました。
続いて日本の施設への移送も検討されましたが、今度はフランス政府が「ヨーロッパ内で、より高い福祉基準を満たす施設でなければならない」として許可を出さず、話は立ち消えに。
最終的に、唯一基準を満たすとされたスペイン・テネリフェ島の施設への移送案も、スペイン側が「設備が要件を満たしていない」と判断し、2025年4月に拒否されました。
このように、法制度や国ごとの基準の違いが障壁となり、シャチたちはいまだ適切な移送先を見つけられないまま閉鎖された施設にとどまっているのです。
複数のNGO、たとえば「One Voice」や「シー・シェパード」などは、シャチの健康状態を確認するため専門家を現地に派遣する許可を求めていますが、これもまだ実現していません。
かといって、彼らを野生の海に放すことはできません。
この親子はいずれも人間の飼育下で誕生し、野生環境には慣れていないので、弱肉強食の自然界ではとても生きていけないと考えられているのです。
Here is Tidebreakers’ official statement about the situation of 2 orcas and 12 dolphins remaining in a shut down Marineland Antibes. pic.twitter.com/SVbUAaIvYP
— TideBreakers (@tide_breakers) May 18, 2025
では、ウィキとケイヨの未来に本当に必要な解決策とは何なのでしょうか?
フランスの環境省や動物保護団体が一致して挙げているのが「海洋サンクチュアリ」の設立です。
これは完全な野生環境ではなく、ある程度人間の管理下にありながらも、より自然に近い広い海域で動物たちを保護する場所のこと。
本来の生息地に近い環境で、半野生的な生活を送らせることで、ストレスや健康被害を軽減しながら長期的に保護するという考え方です。
しかしマイク・リデル氏によれば、そのようなサンクチュアリを維持するには、年間で200万〜300万ユーロ(約3.3億〜5億円)の費用がかかるとされています。
ただ、その投資には十分な意義があります。ウィキとケイヨは適切な環境であれば今後も数十年にわたって生き続けられると考えられているからです。
今回の映像がきっかけとなり、世界がふたたびこのシャチの親子に目を向けています。
この関心が一過性のものではなく、持続的な保護活動へとつながっていくことが、彼らにとっての「本当の解放」につながるかもしれません。
人間のいる世界で生まれて育っているなら開き直ってもっと人間と距離を近くしたらいいのでは?
ショーしないでもプールで過ごしている親子のシャチと触れ合えるアトラクションにでも形変えてしまえばいいではないのかと。
ヨーロッパ内で、より高い福祉基準を満たす施設でなければならないって・・・
要するにアジアのサルに譲ることはできないってことでは・・・