眠れない現代人が知らない『光』の真実

夜、なかなか寝つけずにスマホを触っていたら、逆に目が冴えてしまった──そんな経験をしたことはありませんか?
実は私たちの体は、夜の暗さを感じると自然に「睡眠モード」に切り替わる仕組みになっています。
しかし、現代人の多くは夜間も強い光に囲まれて暮らしているため、本来なら暗くなると起こる体の「睡眠への切り替え」がうまく働かなくなっているのです。
人間の体は、地球が刻む昼と夜のサイクルに合わせて進化してきました。
日中に太陽の明るい光を浴びると、私たちの体は活動モードに切り替わります。
心拍数が上がり、血圧が上昇し、活動するためのエネルギーが全身に供給される仕組みです。
逆に、夜になると体は「睡眠モード」へと切り替わり、心拍数や血圧が下がり、心身が休息できるようになります。
この切り替えを司っているのが、「サーカディアンリズム(体内時計)」と呼ばれる体内のリズムです。
ところが、現代社会は夜になっても本当の意味で「暗く」なることがありません。
寝室の照明を消しても街灯やネオンの光が窓から入り込んでいたり、スマートフォンやタブレットの明るい画面がベッドの中でも手放せなかったりします。
実際、ある調査では寝る直前までスマホやテレビを見る人や、豆電球をつけて寝る人が全体の約40%もいると報告されています。
こうした夜間の「人工的な明るさ」が、私たちの体内時計を狂わせ、深刻な健康問題を引き起こす可能性が懸念されているのです。
実際、夜勤の仕事に従事している人や、慢性的に夜更かしをする人は、心臓病や糖尿病などの病気を発症するリスクが高いことが知られています。
また、ある実験では、寝室をわずか一晩明るくしただけで、睡眠中の心拍数が上昇したり、朝の血糖値のコントロールがうまくいかなくなったりすることが明らかになっています。
このことからも、「明るすぎる夜」が単に眠りを妨げるだけでなく、私たちの体そのものに直接的な悪影響を与えていることがうかがえます。
ただ、こうした夜間の光が、実際に長期間にわたって心臓病などの深刻な病気のリスクをどのくらい高めるのかは、はっきりしていませんでした。
そこで今回、アメリカのハーバード大学やオーストラリアのフリンダース大学を含む国際的な研究チームが、イギリスで行われた非常に大規模な調査を通じて、この疑問に挑みました。
夜間の光を浴びることが、実際に将来の心臓病リスクを高めるのでしょうか?