母乳は成人にとってスーパーフードなのか?
母乳には、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン・ミネラル、そして乳児の免疫を守る抗体など、多くの有用成分が含まれます。
しかし、それらは主に赤ちゃんの未熟な消化・免疫システムを支えるためのもので、成人が摂取しても同じ効果を得られるわけではありません。

ロンドン大学クイーン・メアリー(QMUL)の研究者は、「成人による母乳の直接摂取が医療的効果をもたらすという科学的証拠は存在しない」と明言しています。
抗体や成長因子は成人の消化器でほぼ分解されるため、体内でそのまま働くことはほとんどありません。
見られる効果は、ほとんどがプラセボ(思い込み)の範囲だといいます。
さらに、個人間での母乳取引には重大なリスクもあります。
搾乳・保存・輸送の過程で細菌やウイルスが混入する可能性があり、HIVや肝炎ウイルス、大腸菌などの感染リスクが指摘されています。
また、オンライン取引では牛乳や水を混ぜた偽装品も報告されており、購入者が品質を保証する手段はほとんどありません。
また倫理面でも懸念があります。
本来は乳児向けに優先されるべき母乳が、大人の嗜好品やトレーニングサプリとして流通することで、本当に必要な人への供給が妨げられる恐れがあるのです。
母乳は赤ちゃんにとって確かに生命を支えるスーパーフードですが、成人にとっては科学的根拠のない高級ドリンクにすぎません。
マッチョな彼らが求めるのは筋肉か、はたまた話題性か。
いずれにせよ、このブームは筋肉だけでなく、議論の炎も熱くしているようです。