巨大ブラックホールはなぜ生まれるのか

今回の発見は、宇宙の果てに潜む桁外れに大きなブラックホールの存在を証明するとともに、重力レンズを用いて遠方の静かなブラックホールを直接測定できることを実証した点で大きな意義があります。
この手法を使えば、今後ほかの銀河に眠っている超巨大ブラックホールを次々と発見できる可能性があります。
研究チームは、この手法なら「休眠中」のブラックホールでも遠方まで検出と質量測定が可能だと強調しています。
さらに、これから稼働する超大型望遠鏡 ELT や TMT などの 30m 級望遠鏡と組み合わせれば、宇宙初期のさらに遠方に潜む暗黒の巨人たちを直接検出できる日も近いでしょう。
そうした観測が進めば、これまで手探りだった宇宙におけるブラックホール成長の歴史が一気に解明されるかもしれません。
また、本研究で得られたブラックホールの質量は、その銀河の規模から考えると驚くほど大きい点も注目に値します。
銀河とブラックホールの間には「大きな銀河には大きなブラックホールが宿る」という相関(銀河中心星の速度分散とブラックホール質量の関係、いわゆる M–σ 関係)が知られていますが、今回のブラックホールは通常の関係式が予想する値を上回る可能性があります。
言い換えれば、銀河の成長に比べてブラックホールだけがオーバーサイズに肥大化した「ルール破りの怪物」とも呼べる存在です。
銀河と中央ブラックホールは本来、お互いの成長を支え合う「一蓮托生」の関係にあるはずですが、それにもかかわらず時にこのようなアンバランスな巨大神体が現れる理由は謎のままです。
初期宇宙での急激なガス降着やブラックホール同士の合体などのイベントによって、銀河の制御を超えてブラックホールだけが暴走的に成長した可能性も考えられます。
しかし真相はまだ分かっておらず、この謎を解き明かすことが今後の天文学における大きなテーマとなるでしょう。