氷とフレキソエレクトリシティ、そして雷とのつながり

今回の発見で最も驚くべき点の1つは、自然現象との関連です。
研究結果は、氷のフレキソエレクトリシティが雷雨の際に雲の中で電気が蓄積される過程、すなわち雷の発生メカニズムに関与している可能性を示しています。
雷は、雲の中で氷の粒同士が衝突し、それによって電荷が分離・蓄積されることで生じることが知られています。
蓄えられた電位差が限界を超えると、雷として一気に放出されるのです。
しかし、これまで氷がどのようにして電荷を帯びるのかは明確に説明されていませんでした。
なぜなら、氷は一般的に圧縮されただけでは電荷を生じさせる「圧電体(piezoelectric)」ではないと考えられていたからです。
今回の研究では、氷の板を曲げた際に電位が発生することが実際に測定されました。
具体的には、氷のブロックを2枚の金属板の間に置き、計測装置で電圧を記録したのです。
その結果は、雷雨中に氷粒が衝突して電気的に帯電する現象と一致していました。
このことから、研究者たちは「フレキソエレクトリシティ」が雷の電位生成を説明する有力な要因のひとつである可能性を示唆しています。
さらに研究チームは、この氷の特性を実用的に活かす新たな研究の方向性を模索し始めています。
まだ具体的な応用例を語るには時期尚早ですが、氷を利用した新しい電子デバイスの開発につながるかもしれません。
身近でありながら未知の顔を持つ「氷」。
その秘密を解き明かすことは、自然界の謎を理解するだけでなく、未来の技術革新にも直結する可能性があるのです。