役割分担はなぜ生まれた?
なぜタコは前方の腕をより多く使うのでしょうか。
その理由は、タコの「生活スタイル」と「生き残り戦略」にあると考えられています。
タコは普段、岩場やサンゴのすき間、貝殻のかけらが広がる海底など、さまざまな環境で生活しています。
こうした複雑な環境では、餌となるカニや貝は身を隠していることが多いため、タコは腕を器用に伸ばして細かい場所を探ります。
前方の腕がよく使われるのは、まるで“触覚”のように周囲を探索し、新しい獲物や安全な場所を探すのに最適だからです。

一方、後方の腕は主に移動や姿勢の維持といった、体を支える動作で活躍します。
たとえば、後ろの腕で海底を押して「竹馬」のように体を持ち上げたり、ベルトコンベアのように転がるような動きをすることも。
まるで人間が手で細かい作業をし、足で体を支えるのに似ていますが、タコの場合は8本すべてが状況によって役割を切り替えられる“マルチタスク”な器官となっているのです。
さらにタコの腕は、屈曲、伸長、短縮、ねじれといった複数の変形を同時に組み合わせて使うことができ、1本の腕で複数の動作を同時進行することさえあります。
これによって、タコは「複雑な地形で素早く動き回る」「狭いすき間から獲物を引きずり出す」といった多彩な行動を実現しています。
このような“役割分担+柔軟性”は、進化の過程で生き残るために磨かれてきた重要な能力なのです。
まさに「どの腕も万能、だけど状況に応じて主役が変わる」という、合理的でムダのない仕組みがタコの強みだといえるでしょう。
視覚が向いている方向のが腕的な細かい作業をするというのは当然と言えば当然ですね
大昔ですが、中学の理科の先生がどの触手が足か腕かを判別する方法として「タコの頭を殴る。 “痛っ” と頭を押さえるのに使ったのが腕だ」という冗談を言っていました