竹プラスチックは世界を変えるか?
竹から生まれたこのプラスチックは、まるで「自然と工業の橋渡し」をしているような存在です。
強くて加工しやすく、しかも使い終われば静かに土に還る──それは、私たちが長年求めてきた“理想の姿”にかなり近いものです。
この発見は、プラスチック汚染という世界的な課題に対して、「そもそも素材そのものを変えてしまう」という新しい道を示しました。
研究論文によれば、この竹プラスチックは自動車の内装部品や建築用パネルなど、強度が求められる分野にも使える可能性があります。
つまり「環境のために性能を妥協する」のではなく、「性能を保ったまま環境にも優しい」方向へ舵を切った素材だと言えます。
これはこれまでの生分解性プラスチックにはなかった、非常に重要な一歩です。
もちろん、すぐに街中のプラスチックが竹製に置き換わるわけではありません。
まだ実験室レベルの成果であり、量産技術や実際の環境下での分解スピードなど、これから解決すべき課題は多く残っています。
また、竹を原料として安定的に供給する体制を整える必要もありますし、コストをさらに下げて企業が使いやすい形にする工夫も求められます。
ただし、概算の技術経済解析では2302ドル/トン程度と報告されており、既存プラスチックとの価格差を縮める可能性も示されています。
持続可能性と経済性の両立を実際に数字で示したことは、この研究の大きな価値と言えるでしょう。
竹という身近な存在が、世界の未来を変える可能性を秘めている。
そう考えると、次に足元で見かける竹の茎が、少し違って見えてくるかもしれません。