チーターの敏捷性は、尻尾の「質量」とは無関係だった
多くの動物は尻尾の質量を利用して、俊敏性を獲得しています。
例えばトカゲは、尻尾がある方向に動くと、その慣性によって体は別方向に動きます。
慣性による俊敏性と安定性は、動物たちが獲物を捕らえるために役立ってきました。
そして約10年前、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、この特性を利用して尻尾型ロボット(端におもりを付けた金属棒を装備)を開発しており、動物のような安定性を与えました。
このように多くの科学者は、動物の尻尾において、質量こそが重要な役割を果たしていると考えてきました。
最速の動物チーターに関しても、インターネット上には情報が溢れています。
その多くは「チーターの“重い”尻尾が、体の他の部分とバランスをとる役割を果たしている」と説明しているでしょう。
ところが、チーターに関しては他の動物の原則が当てはまりません。
なぜならチーターの尻尾のほとんどは「ふわふわな綿毛」であり、尻尾の被毛を取り除いた重さは、体重のたった約2%しかないのです。
この質量では、十分な慣性を生み出すことができません。
つまり、チーターの尻尾による敏捷性や安定性は質量ではなく、ふわふわな尻尾が生み出す「空気力学」に基づいたものだったのです。