2021年2月に報告された球状星団NGC 6397の中心のイメージ図。球状星団の中心は恒星質量ブラックホールの群れが形成されている。
2021年2月に報告された球状星団NGC 6397の中心のイメージ図。球状星団の中心は恒星質量ブラックホールの群れが形成されている。 / Credit:ESA/Hubble, N. Bartmann
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100を超える「ブラックホールの大規模集団」が存在するという研究

2021.07.11 Sunday

球状星団は、銀河の回りに150個近くあるたくさんの星が球状に集まった天体のことです。

以前の研究で、この球状星団の中心には、ブラックホールの群れが存在するということが報告されていました。

しかし、バルセロナ大学の研究チームは、球状星団パロマー5の中心に予想をはるかに超える規模のブラックホール集団存在する可能性を報告しています。

その数は優に100を超えるといいます。

そして10億年後には、パロマー5は完全にブラックホールだけの集合体になってしまうとのこと。

研究の詳細は、7月5日付で科学雑誌『Nature Astronomy 』に掲載されています。

Astronomers discover an oversized black hole population in the star cluster Palomar 5(University of Barcelona) https://www.ub.edu/web/ub/en/menu_eines/noticies/2021/07/006.html
A supra-massive population of stellar-mass black holes in the globular cluster Palomar 5 https://www.nature.com/articles/s41550-021-01392-2

球状星団の中心には何がある?

まず、球状星団とは何なのかというところから始めましょう。

球状星団(globular cluster)とは、非常に高密度の恒星の集団の呼び名です。

銀河円盤の周りに多く存在していて、天の川銀河の周りでも150個以上が見つかっています。

銀河を映した画像の周りには、よく大きく明るいの点が映っていますが、あれは非常に巨大な星があるわけではなく、大量の星が密集した球状星団なのです。

星が大量に集まっている以上、球状星団の中心には、星を引きつける巨大な重力源があると考えられます。

かつては、銀河の中心に超大質量ブラックホールがあるように、球状星団の中心にはそれより小規模な中間質量ブラックホールがあるのではないかと考えられていました。

ただ、これは予想に過ぎず、実際に確認されている事実ではありませんでした。

特に中間質量ブラックホールと呼ばれる天体は、まだ直接発見されたことのない予測上の存在です。

宇宙では太陽質量の数倍から数十倍という恒星質量ブラックホールと、銀河の核となる超大質量ブラックホールは見つかっています。

しかし、その間に存在するはずの中間質量ブラックホールというものは見つかっていないのです。

いわばブラックホールのミッシングリンクと呼ぶべき存在が中間質量ブラックホールでした。

そのため、球状星団からは未知の中間質量ブラックホールが見つかるかもしれないと、熱心に観測されていたのです。

しかし、2021年2月にハッブル宇宙望遠鏡は、球状星団「NGC 6397」の中心には中間質量ブラックホールはなく、拡散した恒星質量ブラックホールの集団があったと報告したのです。

球状星団の中心は、恒星質量ブラックホールの集団だった
球状星団の中心は、恒星質量ブラックホールの集団だった / Credit:ESA/Hubble, N. Bartmann

そう、球状星団を作っているのは1つの大きなブラックホールではなく、無数のブラックホールの群れだったのです。

これだけでも驚きですが、今回報告された球状星団パロマー5の中心は、それがわかっていても驚くようなすごい状況になっていました。

次ページ恒星ストリームを作り出す球状星団「パルマー5」

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