球状星団の中心には何がある?
まず、球状星団とは何なのかというところから始めましょう。
球状星団(globular cluster)とは、非常に高密度の恒星の集団の呼び名です。
銀河円盤の周りに多く存在していて、天の川銀河の周りでも150個以上が見つかっています。
銀河を映した画像の周りには、よく大きく明るい光の点が映っていますが、あれは非常に巨大な星があるわけではなく、大量の星が密集した球状星団なのです。
星が大量に集まっている以上、球状星団の中心には、星を引きつける巨大な重力源があると考えられます。
かつては、銀河の中心に超大質量ブラックホールがあるように、球状星団の中心にはそれより小規模な中間質量ブラックホールがあるのではないかと考えられていました。
ただ、これは予想に過ぎず、実際に確認されている事実ではありませんでした。
特に中間質量ブラックホールと呼ばれる天体は、まだ直接発見されたことのない予測上の存在です。
宇宙では太陽質量の数倍から数十倍という恒星質量ブラックホールと、銀河の核となる超大質量ブラックホールは見つかっています。
しかし、その間に存在するはずの中間質量ブラックホールというものは見つかっていないのです。
いわばブラックホールのミッシングリンクと呼ぶべき存在が中間質量ブラックホールでした。
そのため、球状星団からは未知の中間質量ブラックホールが見つかるかもしれないと、熱心に観測されていたのです。
しかし、2021年2月にハッブル宇宙望遠鏡は、球状星団「NGC 6397」の中心には中間質量ブラックホールはなく、拡散した恒星質量ブラックホールの集団があったと報告したのです。
そう、球状星団を作っているのは1つの大きなブラックホールではなく、無数のブラックホールの群れだったのです。
これだけでも驚きですが、今回報告された球状星団パロマー5の中心は、それがわかっていても驚くようなすごい状況になっていました。