100を超えるブラックホールクラスター
研究チームが行ったのは、球状星団が形成されてから、最終的に消滅するまでの各星の軌道と進化のシミュレーションです。
ここで、星団の初期特性を現在の星団の観測結果や恒星ストリームの状態と一致するように変化させ、シミュレーションを繰り返したのです。
パロマー5の特徴は、星同士がかなり離れた低密度の状態と、長く伸びた恒星ストリームを伴っていることです。
結果、パルマー5はの内部にあるブラックホールの数が、星団の星の数から予想される3倍近くもあるということがわかりました。
今回の論文の筆頭著者であるバルセロナ大学のマーク・ギレス(Mark Gieles)教授は次のように語ります。
「星団全体の質量の20%近くがブラックホールで構成されていました。
それらはそれぞれ太陽の20倍の質量を持ち、星団の若い時代に超新星により形成されたと考えられます」
こうしたブラックホールの生み出す重力の作用は、回りの星をスリングショットのように弾き飛ばす働きをします。
こうして星団のは質量の90%を徐々に放出し、恒星ストリームを形成したと考えられます。
またブラックホールはガスや塵を加熱して周囲へ吹き飛ばします。
こうした効果によって、パルマー5は密度が他の星団に比べてほぼ3桁近く低下したと考えらるのです。
これは研究者のマーク・ギレス教授がアップしているシミュレーション結果の動画です。
シミュレーションによると、パルマー5は実に星団のほぼ4分の1がブラックホールになっており、その数は124個に及ぶといいます。
なぜパルマー5はこのような状態になったのでしょうか?
研究者たちの行ったシミュレーションによると、重要なのは星団の初期密度だったと考えられます。
星団が十分に密集していた場合、誕生したブラックホールは重力相互作用によって星団の外へはじき出される傾向がありました。
しかし、密集が十分でなかった場合、ブラックホールは星団内に留まり続け、逆に恒星を外に放り出していくのです。
この経路をたどってしまったパルマー5は、シミュレーション結果によると、あと10億年程度で星団がほぼ完全にブラックホールになってしまい、他の星はすべて外へ追い出されてしまうようです。
いずれ、ブラックホールの集団の塊が天の川銀河の周りを回ることになるのでしょう。