容器の色で食生活改善が可能に?
コップの色が飲み物の味覚に影響することは、これまでの研究でもよく知られています。
たとえば、カフェオレは白色のコップで飲むと苦味が強くなり、チョコレート飲料は茶色や橙色にすると、チョコの風味がより濃く感じられます。
その一方で、これらの先行研究では、飲料の種類がコーヒーやカフェオレ系に限定されており、ほかの飲み物でも同じ効果があるのかは分かっていません。
それから、飲み物が直接見える状態で調査されていたため、味覚の変化がコップの色のみで生じたのか、あるいは飲み物自体の色も関係していたのかも不明でした。
そこで今回の研究では、「甘味・苦味・酸味・塩味」のいずれかを強調した4種の水溶液(ショ糖、塩化マグネシウム、クエン酸、食塩)を用意。
それをもとに、コップの色(白、黒、赤、黄、青、緑、ピンク、茶)を変えることで、味覚にどのような変化が生じるかを調査しました。
実験では、容器を各色の包装紙で覆うことで、飲み物が見えない状態にしています。
被験者には、コップの色が見える状態と、アイマスクをして見えない状態とで各飲料を試飲し、甘味、苦味、酸味、塩味について、その強度を11段階で評価してもらいます。
そして、コップが見える状態で評価した味覚を基準として、見えない状態で評価した味覚との差を調べました。
その結果、飲み物自体の色とは無関係に、コップの色は、飲料の味覚を強めたり、弱めたりする効果を持つことが判明したのです。
下の図を見ると、甘味を強める色はなく、反対に緑や黒のコップで味覚が低減しています。
苦味は青や黒色、酸味は黄色、塩味はピンク色のコップで強くなっていました。
これと別に、コップの色からイメージされる味と、実際の飲み物の味の一致レベルを「調和度」として評価しました。
すると、酸味と黄色の調和度はずば抜けて高く、甘味と緑色の調和度は低かったことから、色と味の調和度も味覚の変化にかかわっていると考えられます。
他方で、塩味とピンク色の調和度はふつうであったことから、色と味の調和が、味覚を変える必要条件ではないことも示唆されました。
以上の結果から、コップの色は、すべての飲み物に対して同じ効果を持たないが、特定の味覚については味を強めたり、弱めたりすることが分かりました。
この成果は、特定の飲み物や料理に特定の容器を使うことで、減塩や糖質制限につながると思われます。
コップや容器の色を活かした食生活の改善が可能かもしれません。