大人になってから現れる「相対年齢効果」の長期的な不利益
研究では、相対年齢が若いことでうつ病のリスクが14%増加し、薬物乱用のリスクも14%、低学歴となるリスクは17%増加したと報告しています。
研究チームの1人、キングス・カレッジ・ロンドンのジョンア・クンツィ(Jonna Kuntsi)教授は「教室で最年少であることは、複雑な発達上の影響を及ぼし、子どもを学業の初期段階で不利な立場に置く可能性がある」と述べています。
また、最近行われたフィンランドの大規模な登録研究でも、相対年齢効果は特定の学習障害を引き起こすことが報告されています。
クンツィ教授は、読書や文字の学習、算数などの難易度について、子どもたちの相対的な年齢にもっと焦点を当てるべきだといいます。
こうした不利な状況で、孤立し落ちこぼれにされてしまった早生まれの子は、人生の後半で苦境に立たされる可能性があります。
これは何も海外だけで報告されている事実ではありません。
日本でも2015年に大阪大学が、若者の自殺率を比較した結果、早生まれの若者の自殺率が約30%高かったとする論文を米国科学誌「PLOS ONE」に発表しています。
全ての人に当てはまるわけではないとはいえ、早生まれの子を1年近く年長の子たちと同じクラスにすることは、彼らの人生において長期的に不利な影響を及ぼす可能性があることは確かなようです。
もしかしたら、早生まれでこうした内容に思い当たることがあるという人もいるかもしれません。
クンツィ教授は、デンマークでは就学年齢について柔軟な対応をしており、学校へ通う準備ができていない幼児には、遅らせて学校を始めさせる機会を用意しているため、こうした他の国で見られる「相対年齢効果」の負の問題が少なくなっている、と述べています。
強引に学年を区切るのではなく、長い人生の出発点となる就学年齢については、その子の特性を考慮してもっと柔軟な対応を取れるようにしなければならないのかもしれません。
ただ、1年待ってあげなかっただけで、その子どもの後の人生が暗いものになってしまうのだとしたら、それはとても残念なことです。