成長の差で不利になる「早生まれ」問題
「早生まれ」とは、日本においては1月1日から4月1日に生まれた子どもたちのことを指しています。
日本では4月を境に年度を区切っているため、早生まれの子たちは、前年に生まれた子たちと同じ学年として学校生活を始めることになります。
日本の場合、小学校の入学時点ではみんな年齢は6歳で揃っていますが、その中には先月6歳になったばかりの子と、来月7歳になるという子が含まれるのです。
こうしたもっとも極端な例では、同じ学年なのに最大11カ月成長に差がついていることになります。
小学生にとって約1年の成長差は、精神の成熟度、体格、認知能力にかなり大きな違いを生むと予想できます。
これは学業、スポーツにおいて早生まれの子を不利に立たせる可能性があります。
この問題は「相対年齢効果」と呼ばれ、実際に見られる傾向なのかどうか多くの研究者が観察の対象としてきました。
海外においても、同じ問題は存在しています。
英国では、日本と異なり学校年度の区切りは9月1日です。
そのため日本における「早生まれ」は英国の研究では「summer babies(サマーベイビー)」と呼ばれています。
英国キングス・カレッジ・ロンドンとスウェーデンのエレブルー大学の研究チームは、スウェーデン国民登録簿(Swedish National Registers)の30万人の個人データを利用して、「サマーベイビー」に見られる傾向を調査しました。
ちなみにスウェーデンの学校年度は1月1日が基準日なので、特に若い早生まれは11月から12月に生まれた子になります。
そしてこの調査の結果、「早生まれ(サマーベイビー)」だった子は、大人になってからうつ病や薬物乱用障害を発症する可能性が高くなるという傾向が明らかになったのです。
この原因について、研究者はいわゆる「サマーベイビー」は、社会的に成熟していない状態で学校生活を始めるため、他の仲間から孤立しがちになり、後に精神的な問題を引き起こす可能性が高くなると述べています。
学業やスポーツ面でも不利となり、進学などがうまく行かなくなる可能性もあります。
また、こうした同学年内の相対年齢の差は、年少の子に普通に見られる行動を、同学年の年長の子たちと比較することで、ADHD(注意欠陥多動性障害)と誤診してしまうリスクもあると専門家は警告します。
こうしたことが遠因となって、大人になったときにさまざまな障害を彼らに引き起こす可能性があるのです。
もちろん、これが全ての早生まれの人たちに該当するわけではありません。
そのため、あまりピンとこないと感じる人もいるでしょう。
しかし、「相対年齢効果」に関する問題は、この他にも多く世界で報告されていて、特にその悪影響は大人になってから現れるといいます。