新たな研究は肥満の人が運動すると、身体は平静時のカロリー消費を抑えようとすることを発見した
新たな研究は肥満の人が運動すると、身体は平静時のカロリー消費を抑えようとすることを発見した / Credit:canva
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肥満の人ほど「運動で痩せにくい体」になっている

2025.09.20 07:00:43 Saturday

「1度手に入れた脂肪を手放してなるものか!」

いくら本人は痩せたいと望んでも、肥満の人の身体はそんな風に思っているようです。

英国ローハンプトン大学(University of Roehampton)が主導した研究によると、定期的な運動を繰り返すと体は生命維持に必要なカロリーを減少させるようになり、運動によるカロリー燃焼の効果が低下してしまうというのです。

さらにこの効果は、肥満の人ほど顕著に現れるという。

運動しても疲れるだけで痩せにくくなってしまうとは、ダイエットする人の心を折りにくる悲しい報告です。

研究の詳細は、科学雑誌『Current Biology』に2021年8月27日付で掲載されています。

Cruel twist: Exercise reduces calories burned at rest in individuals with obesity https://www.eurekalert.org/news-releases/926541
Energy compensation and adiposity in humans https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.08.016

人間のエネルギー代謝の詳細な調査

肥満を解消しようと運動を始める人は多いかもしれませんが、闇雲に運動だけしても上手く行かない可能性がある
肥満を解消しようと運動を始める人は多いかもしれませんが、闇雲に運動だけしても上手く行かない可能性がある / Credit:canva

肥満がさまざまな健康リスクにつながることを、多くの研究が報告しています。

そのため、肥満に陥ってしまった人の中には、なんとかそれを解消しようと決意して運動を始める人も多いでしょう。

しかし、この研究は、単純に定期的な運動をしてもダイエットがうまくいかなくなる可能性を示しています。

研究チームが利用したのは、国際原子力機関(IAEA)の1750人以上を調査した人間のエネルギー消費に関する世界最大のデータベースです。

IAEAでは、増大する肥満の危機に取り組む国々を支援する目的で、二重標識水法(DLW)という比較的新しい方法を用いた人間の運動とエネルギー代謝に関するデータベースを公開しています。

二重標識水法とは、水素と酸素の安定同位体である重水素と18O(酸素18)で作られた標識水を被験者に飲んでもらい、後に尿中の安定同位体比の変化を測定することで、体の消費したエネルギー量を計算するというものです。

このデータベースを使用することで、研究チームはさまざまな状況での人間の代謝エネルギー(消費カロリー)について、調査することができました。

そのうちの1つが、基礎代謝(BEE)つまり「安静にしているときの最低消費カロリー」です。

これは、私たちが体を維持するために必要とする基礎的なカロリー量と言えます。

チームが調査した結果、この基礎的な消費カロリーは毎日の運動レベルが一貫して高い期間中減少することがわかりました。

これにより、運動によって消費したカロリーの平均28%分が相殺されていたのです。つまり100kカロリー消費していた運動で、72kカロリーしか消費されない状態になっていたのです。

これは私たちが長期にわたって運動を続けるほど、同じ運動量で消費されるカロリーが減ってしまうことを意味しています。

そして、この調査の中でチームはさらに驚くべき発見をしました。

それは、ボディマス指数(BMI)が高い人ほど、この効果が大きくなるという事実でした。

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