人間のエネルギー代謝の詳細な調査
肥満がさまざまな健康リスクにつながることを、多くの研究が報告しています。
そのため、肥満に陥ってしまった人の中には、なんとかそれを解消しようと決意して運動を始めた人も多いでしょう。
しかし、新たな研究は単純に定期的な運動をしてもダイエットがうまくいかない可能性を示しています。
今回研究チームが利用したのは、国際原子力機関(IAEA)の1750人以上を調査した人間のエネルギー消費に関する世界最大のデータベースです。
IAEAでは、増大する肥満の危機に取り組む国々を支援する目的で、二重標識水法(DLW)という比較的新しい方法を用いた人間の運動とエネルギー代謝に関するデータベースを公開しています。
二重標識水法とは、水素と酸素の安定同位体である重水素と18O(酸素18)で作られた標識水を被験者に飲んでもらい、後に尿中の安定同位体比の変化を測定することで、体の消費したエネルギー量を計算するというものです。
この方法はエネルギー代謝を測定するための非常に優れた方法とされていますが、実験に使う酸素18という元素や、測定機材が高価なことと、同位体測定という高度な核技術を使うことから、なかなか大規模な調査には使われていませんでした。
日本では同位体を飲むという実験が、被ばくを連想させて普及しづらかったという背景もあるようです。
IAEAが肥満に関する代謝エネルギーの大規模なデータベースを公開しているということを不思議に感じた人もいるかもしれませんが、それは二重標識水法に関するこうした事情があるためです。
このデータベースを使用することで、今回の研究チームはさまざまな状況での人間の代謝エネルギー(消費カロリー)について、調査することができました。
そのうちの1つが、睡眠時の体が消費するカロリーです。
これは、私たちが体を維持するために必要とする基礎代謝のカロリー量です。
チームの調査の結果、この値は毎日の運動レベルが一貫して高い期間中28%減少することがわかりました。
これは私たちが長期にわたって運動すればするほど、もっとも基本的な体の燃焼カロリーが少なくなっていき、1日に私たちが燃焼する全体的なカロリー量を減少させることを示しています。
そして、この調査の中でチームはさらに驚くべき発見をしました。
それは、ボディマス指数(BMI)が高い人ほど、運動を増加させた際の基礎代謝のエネルギー消費が、大きく減少しているという事実でした。