「人の声」が食欲を増進するスパイスになる?
これまでの研究でも、一人より誰かと一緒に食事をする方が、より多くの量を美味しく食べられることが示されていました。
また、孤食をする人はよくテレビや動画を見ながら食事しますが、それがどれだけ摂食量や美味しさを増進させるかは分かっていません。
そこで研究チームは、大学生を対象とした3つの実験を実施。
まず、被験者の目の前にモニターを置き、「新製品でそれぞれ味が違う」とだけ伝え、お皿に盛ったポップコーンを90秒間で好きなだけ食べてもらいました。
それと並行して、モニターには映像が映し出されます。
1つはモノだけが映っている映像、もう1つはモノと人が映っている映像で、それぞれを音声ON・OFFで提示したので、被験者には計4回の試食をしてもらいました。
映像の順番が結果に影響しないよう、被験者ごとにモニター実験の順番は変えています。
その結果、人が映っているかどうかにかかわらず、人の「音声」が提示されるときに、ポップコーンがより美味しく感じられ、摂食量も増えることが判明したのです。
モニターに映る人数を増やしても結果は同じで、どの映像条件でも、人の音声が入るか否かが結果を大きく左右していました。
つまりは、人の声が孤食を美味しくする調味料になるということでしょう。
今回の研究成果は、外食の自粛が求められる中で、いかに一人での食事の質を高め、充実させるかを示すものです。
これは例えば、コロナ禍の自粛中の人だけでなく、入院中や独り身の高齢者の方々にも活用できます。
日本では年々、一人で食事せざるを得ない高齢者が増加しており、さらに、コロナパンデミックによる帰省の制限で、家族と会えない時間も増えています。
高齢者における孤食の増加は、うつ病発症のリスクとも関連しており、非常に深刻な問題です。
その中で、モニターや通話機能を活用することで、孤食によるメンタルヘルス問題の予防が期待できます。
研究チームは今後、オンライン上の会食でも、同じ効果が得られるかを調査する予定とのこと。
今現在、孤食に味気なさを感じている人は、動画や通話などで「人の声」を取り入れると良いかもしれません。