メダカの起源は「インド亜大陸」と判明
メダカは、ダツ目のメダカ科に属し、日本だけで37種、世界を合わせると約550種が知られています。
分布域は東南アジアを中心とし、西はインドから、東は日本まで及びます。
その一方で、メダカ科の共通祖先の魚が、いつどこで出現したかはわかっていませんでした。
そこで日本の研究機関、およびインド、ベトナム、ラオス、ミャンマー、タイ、インドネシアの6カ国からなる研究グループは、世界中に分布するメダカ科の魚類を収集し、ミトコンドリアゲノムと5つの核遺伝子を解析しました。
その結果、インドの西海岸沿いにある西ガーツ地方に固有の「セトナイメダカ(Oryzias setnai)」が、メダカ科の系統進化の中で最も古くに分岐した種であることが明らかになったのです。
そのほかのアジア圏に分布する種は、すべてセトナイメダカから派生したことが示されています。
さらに、これまでに発見された化石データをもとにメダカ科魚類の分岐年代を推定したところ、セトナイメダカとその他のメダカの共通祖先の分岐は、約7400万年前の中生代後期まで遡ることが判明しました。
当時は、インド亜大陸がゴンドワナ大陸(今日のアフリカ、南米、オーストラリア、南極を含む巨大大陸)から離れて、インド洋を北上している頃でした。
これはつまり、メダカ科の共通祖先がインド亜大陸に起源することを示します。
その後、インドがユーラシア大陸にぶつかって合体したことで、アジア圏に生息範囲を広げていったのでしょう。
メダカは、恐竜たちでさえ生き残れなかった約6600万年前の絶滅イベントを耐えて、今日まで繁栄してきたようです。
それと同時に、新たな謎が浮上しています。
メダカ科が属するダツ目はほかに、ダツ科、サヨリ科、トビウオ科、コモチサヨリ科がいますが、これらの大半は海水魚です。
対するメダカは、ご存知の通り、淡水魚です。
本研究から、メダカとダツ目の他の魚類の分岐もインド亜大陸で起こったと示唆されましたが、なぜ一方は淡水域に、他方は海水域に進出したのかが分かりません。
研究チームは、今回明らかになったメダカ科の系統進化の歴史が、その謎の解明に大いに役立つと考えています。
これからメダカを飼おうという方は「インド亜大陸からはるばるやって来たんだ」と思いを馳せてみると、壮大な気分になるかもしれません。