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雨粒はピーナッツやドーナツの形をして転がり侵食力を増す。イメージ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
physics

雨粒が坂を転がると「ピーナッツ型」や「ドーナツ型」を形成し、10倍の侵食力を生み出すと判明

2025.12.25 20:00:37 Thursday

雨粒が土壌を少しずつ削ることは理解できますが、実は私たちの想像以上にその侵食力は強いものでした。

最新の研究によると、雨粒の本当の破壊力は「地面に当たった後」にこそ現れる可能性があります。

この現象を詳しく調べたのは、アメリカのペンシルベニア大学(Penn)の研究チームです。

研究チームは、乾いた斜面では雨粒が単に消えるのではなく、砂を集めながら転がり、「サンドボール」と呼ばれる塊を形成することで、侵食を大きく増幅させることを明らかにしました。

この研究成果は、2025年12月22日付で『Proceedings of the National Academy of Sciences:PNAS』に掲載されました。

Raindrops form ‘sandballs’ as they roll downhill, contributing more to erosion than previously thought https://phys.org/news/2025-12-raindrops-sandballs-downhill-contributing-erosion.html Watch these raindrops turn into rolling ‘sandballs’ https://www.science.org/content/article/watch-these-raindrops-turn-rolling-sandballs
Sandball genesis from raindrops https://doi.org/10.1073/pnas.2519392122

雨粒が坂を転がると侵食力が10倍になる

これまでの土壌侵食の研究では、雨粒が地面に衝突した瞬間に起きる「スプラッシュ侵食(飛散侵食)」が主な関心対象でした。

雨粒が当たることで砂や土が跳ね飛ばされ、その分だけ地表が削られると考えられてきたのです。

一方で、衝突後の雨粒がどのように振る舞うのかについては、ほとんど詳しく調べられてきませんでした。

雨粒は小さく、動きが速く、自然環境では観察が難しいためです。

そのような背景にあって、今回の研究が始まったきっかけは、スイスの斜面での偶然の野外観察にありました。

雨の中を歩いていた研究者たちは、斜面を小さな球状の塊が転がり落ちていく様子に気づきます。

それは水滴のようでありながら砂に覆われ、まるで小さな雪玉のように見えました。

この不思議な現象を確かめるため、研究チームは実験室での再現実験に取り組んだのです。

実験では、長さ約1.2メートルの砂床を用意し、乾いたシリカ砂を敷き詰めた上で、約30度の傾斜をつけました。

その上から一定条件の水滴を落とし、高速度カメラで水滴の動きや形の変化を詳しく記録。

このように条件を厳密に管理することで、雨粒が斜面を転がる過程と、砂を取り込んでいく様子を定量的に測定できるようにしたのです。

その結果、雨粒は衝突後に斜面を転がりながら砂粒を次々と取り込み、研究チームが「サンドボール」と名付けた塊へと成長することが分かりました。(画像や動画はこちら

このサンドボールの形成によって、1つの雨粒が移動させる土壌量は、衝突時のスプラッシュだけの場合と比べて最大で約10倍に増えることが示されました。

ただし、サンドボールは一様な存在ではありません。

その形や振る舞いにはいくつかのパターンがあり、侵食への影響の仕方も異なるのです。

より詳しい結果については、次項で確認しましょう。

次ページ坂を転がる雨粒は「ピーナッツ型」と「ドーナツ型」になる

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