「冬生まれ」は運脳能力の発達が早い
発達の過程を判断する目安にはこれまで、厚労省などによる「発達マイルストーン」という指標が使われてきました。
これは「4カ月までにあやすと笑うようになる」「8カ月までに一人で座れるようになる」のように、数カ月おきに実施する定点的なアンケート調査です。
しかし、近年のスマホやタブレットの普及により、育児をリアルタイムで記録できるアプリが増えてきました。
株式会社ファーストアセントの『パパっと育児@赤ちゃん手帳』もそのひとつです。
このアプリには「はじめて」という項目があり、「寝返り」「ひとり歩き」などの発達が初めて達成された日付を記録できます。
研究チームは、2017年よりこうしたアプリの記録を利用した研究を行っており、延べ70万人、5億件の育児ビッグデータを調査してきました。
今回研究に使用されたデータは、2014〜2019年の間にアプリに記録されたもので、2才ころまでに達成される発達記録20項目について、計1万6627人を分析したものです。
ちなみに、分析された20項目には以下のものが含まれます。
あやし笑い・人見知り・「バイバイ」をまねする・動くものを目で追う・ガラガラを握る・おもちゃに手を伸ばす・ものを逆の手に持ちかえる
小さなものを指でつまむ・「あー」「うー」などの声を出す・声を出して笑う・反復喃語・ママと呼ぶ・ママ以外の言葉をしゃべる
寝返り・おすわり・はいはい・つかまり立ち・つたい歩き・ひとり立ち・ひとり歩き
これをもとに、発達マイルストーンの達成時期に関連する子どもの特性を調査しました。
具体的には、性別・生まれたときの季節・栄養の摂り方(母乳中心、混合栄養、粉ミルク中心)に着目しています。
その結果、基本的な運動発達にあたる7項目(寝返り・おすわり・はいはい・つかまり立ち・つたい歩き・ひとり立ち・ひとり歩き)のデータ分布が生まれた季節によって異なっていました。
この7項目では、夏生まれより冬生まれの子どもの方が達成時期が早かったのです。
さらに、言語発達にかんする調査では、男女差で違いが見られ、男の子の方が言語発達が比較的ゆっくりであることが示されました。
「ママ」と呼び始める年齢が1才半以降と遅かった子どもの割合は、女の子は8%だったのに対して、男の子は15%に及んでいました。
今回の成果は、毎日の子育てで目の当たりにする発達過程をリアルタイムで「見える化」した初めての研究です。
発達の「見える化」は、能力の獲得に遅れが見られる子どもをより早く、確実に見つけることで、乳幼児健診を補助できると考えられます。