ブロッコリーに含まれる特定の分子が小腸の働きを向上・正常化する
小腸の壁には、水や栄養素を体内へ通過させるだけでなく、有害な粒子や細菌を防ぐ働きがあります。
今回、パデュー氏ら研究チームは、ブロッコリーに含まれる分子が、小腸の細胞の機能を高めることを発見しました。
小腸の上皮細胞には芳香族炭化水素受容体(AHR:Aryl Hydrocarbon Receptor)と呼ばれるタンパク質が存在しています。
このAHRは、活性化すると細胞核の中へ移行し、様々な遺伝子発現を誘導することで知られています。
これにより、栄養素を吸収する細胞や、腸壁の保護に役立つ粘液を分泌する細胞、消化酵素を含むリソソームを分泌する細胞などが調整され、小腸の機能が高まるのです。
そしてブロッコリーに含まれる分子こそが「AHRリガンド」と呼ばれるものであり、AHRと結合して、AHRを活性化させると判明しました。
つまり、ブロッコリーを食べると小腸の細胞の様々な機能に良い影響がもたらされるのです。
研究チームは、この効果を証明するために、マウス実験を行いました。
ブロッコリーを15%含む食事(人間であれば1日約300gに相当)を与えたマウスと、ブロッコリーを含まない通常食を与えたマウス(対象群)を比較したのです。
その結果、ブロッコリーを与えられなかった対象群マウスはAHRの活性が不足しており、小腸での食物通過時間の短縮、胚細胞数、保護粘液、病原体を排除するパネート細胞、リソソーム産生、腸細胞の数がそれぞれ減少していました。
パデュー氏によると、「ブロッコリーを食べさせなかったマウスの腸内環境は様々な分野で悪化し、病気のリスクが高まっていた」ようです。
対照的に、ブロッコリーを与えられていたマウスでは、AHRが活性化され、上記を含む小腸の機能向上・正常化が見られ、病気の発症が抑制されていました。
同様の効果が人間でも得られると仮定すると、ブロッコリーには豊富な栄養が含まれるだけでなく、小腸の機能を正常化する働きがあると言えます。
これは具体的には、風邪やインフルエンザなど身近な感染症からがんなどの大きな病気を含む免疫機能の改善に貢献する可能性があります。
また、小腸の機能向上は、下痢や便秘のような症状に対しても良い方向に働く可能性があります。もともとブロッコリーが含むビタミンCやカルシウムなどの栄養素は、胃や腸の健康を維持するのに役立つ物質であり、またブロッコリーの食物繊維も便秘の改善に役立ちます。
そのため、病気になりにくい健康な体の維持や、消化器の不調に悩む人に対してブロッコリーは推奨される食べ物といえるでしょう。
ブロッコリーは名実ともに「スーパーフード」だったのです。
ちなみにこの結果は、ブロッコリーだけでなく、ブロッコリーと同じアブラナ科の野菜(キャベツ、芽キャベツなど)にもAHRリガンドが含まれ、同様の効果が得られることを示唆しています。