「食の砂漠」と「食の沼地」が広がる
1990年代に「食の砂漠(food desert)」という言葉が作られて以来、この問題は世界の様々な国で広がってきました。
食の砂漠とは、居住地の周囲に食料品店が少なく、特に生鮮食品が入手困難になる現象やそれが見られる地域のことです。
日本では公共交通機関の衰退や少子高齢化、大型店舗の進出により、地方の食料品店が廃業することで生じています。
低所得者や高齢者などは自家用車の所有と運転が難しいため、こうした地域では食料の入手にかなり制限を受けて暮らさなければいけません。
特に保存期間の短い生鮮食品は買い置きすることができず、健康的な食生活を送るのが非常に難しくなっています。
1つの解決策は、そのような「食の砂漠」地域から引っ越すことですが、そもそも低所得者や高齢者にとって引越しのハードルは非常に高く、実行できない場合が多いでしょう。
このような食の砂漠化はアメリカなどでより顕著です。
例えば、アメリカの裕福な白人居住区には、貧しい黒人居住区よりもスーパーマーケットが3~4件も多く、公共交通機関が無い場合では、後者は手頃な値段で生鮮食品を入手できません。
そして最近では、「食の砂漠」とはいくらか形態が異なる「食の沼地(Food swamps)」と呼ばれる地域が生まれているようです。
食の沼地とは、食の砂漠と同じく近隣に生鮮食品を入手できる食料品店がほとんど無いものの、ファストフード店やコンビニエンスストアは近所にあり、健康に悪い食べ物なら手軽に入手しやすい地域のことです。
食の沼地に住む人は、他に選択肢が無いため、ファストフード店で食事をすることが増えてしまうのです。
実際、オーストラリアの西シドニーは車に依存しており、多くの郊外では食品売り場がほとんど存在せず、あったとしてもその84%がファストフード店なのだとか。
では、このような「食の砂漠」と「食の沼地」は、そこに住む人々の健康にどれほどの影響を及ぼすのでしょうか?