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「ピンチになったら赤ちゃんに戻る」老化プロセスを逆転させる不老不死生物を新たに発見!

2024.08.27 Tuesday

生きとし生けるものの老化は常に一方通行であり、大人から赤ちゃんに戻ることはありえません。

しかし以前の研究で、刺胞動物(しほうどうぶつ)の「ベニクラゲ」だけは大人から赤ちゃんの状態に戻り、再び生を繰り返すことが知られていました。

それゆえ、ベニクラゲは通称”不老不死のクラゲ(Immortal Jellyfish)”と呼ばれています。

そんな中、ノルウェー・ベルゲン大学(University of Bergen)は最近、「ベニクラゲと同じ能力を持つ生物を新たに発見した可能性がある」と報告しました。

その生物はクラゲに似た有櫛動物(ゆうしつどうぶつ)というグループに属する「ムネミオプシス・レイディ」です。

彼らは一体どのような”若返りの秘術”を行うのでしょうか?

研究の詳細は2024年8月10日付で生物学のプレプリントリポジトリ『BioRxiv』に公開されています。

 

This transparent sea creature can age in reverse https://www.livescience.com/animals/comb-jellies-can-age-in-reverse
Reverse development in the ctenophore Mnemiopsis leidyi(BioRxiv) https://doi.org/10.1101/2024.08.09.606968

ベニクラゲの「若返りの秘術」とは?

ベニクラゲ
ベニクラゲ / Credit: ja.wikipedia

ムネミオプシス・レイディの前に、まずはベニクラゲの若返りを見てみましょう。

ベニクラゲ(学名:Turritopsis dohrnii)は世界中の温帯〜熱帯の海に生息する体長1センチにも満たない小さなクラゲです。

ベニクラゲの一生は他の多くの生物と同じように、両親の交配により作られた受精卵から始まります。

受精卵から生まれたベニクラゲは最初、海中をふわふわと漂う「プラヌラ」という幼生段階に入ります。

その後、海底の岩場や貝殻に付着して固着段階になったのが「ポリプ」です。

ポリプは次第に植物のように枝分かれした状態になり、一つ一つの芽から「幼クラゲ」が海中に離脱していきます。

そして数週間の成長ののちに「メデューサ」と呼ばれる大人のベニクラゲとなるのです。

ベニクラゲの通常の生活環(緑)と若返りのルート(青)
ベニクラゲの通常の生活環(緑)と若返りのルート(青) / Credit: Maria Pascual-Torner et al., PNAS(2022)

ほとんどすべてのクラゲは寿命を終えると、体が徐々に分解されていき、海の中へと溶けていきます。

ところがベニクラゲは違います。

彼らはメデューサの段階で飢餓状態に陥ったり、体を損傷したりすると、ポリプの状態に戻り、何度も生をリスタートできるのです(上図の青色ルート)。

しかも、この若返りの秘術はたった1回だけ許された能力ではなく、何度も発動することができます。

つまりベニクラゲは理論上、「不老不死を手に入れた存在」と言えるのです。

一方通行の老化が運命づけられている生物において、ベニクラゲの能力は異例中の異例であり、特異な存在といえます。

ところがベルゲン大学の研究チームは、ベニクラゲと同じ能力を持った新たな生物を見つけたというのです。

それが「ムネミオプシス・レイディ」でした。

次ページ不老不死の能力を持つ新生物「ムネミオプシス・レイディ」

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