ベニクラゲの「若返りの秘術」とは?
ムネミオプシス・レイディの前に、まずはベニクラゲの若返りを見てみましょう。
ベニクラゲ(学名:Turritopsis dohrnii)は世界中の温帯〜熱帯の海に生息する体長1センチにも満たない小さなクラゲです。
ベニクラゲの一生は他の多くの生物と同じように、両親の交配により作られた受精卵から始まります。
受精卵から生まれたベニクラゲは最初、海中をふわふわと漂う「プラヌラ」という幼生段階に入ります。
その後、海底の岩場や貝殻に付着して固着段階になったのが「ポリプ」です。
ポリプは次第に植物のように枝分かれした状態になり、一つ一つの芽から「幼クラゲ」が海中に離脱していきます。
そして数週間の成長ののちに「メデューサ」と呼ばれる大人のベニクラゲとなるのです。
ほとんどすべてのクラゲは寿命を終えると、体が徐々に分解されていき、海の中へと溶けていきます。
ところがベニクラゲは違います。
彼らはメデューサの段階で飢餓状態に陥ったり、体を損傷したりすると、ポリプの状態に戻り、何度も生をリスタートできるのです(上図の青色ルート)。
しかも、この若返りの秘術はたった1回だけ許された能力ではなく、何度も発動することができます。
つまりベニクラゲは理論上、「不老不死を手に入れた存在」と言えるのです。
一方通行の老化が運命づけられている生物において、ベニクラゲの能力は異例中の異例であり、特異な存在といえます。
ところがベルゲン大学の研究チームは、ベニクラゲと同じ能力を持った新たな生物を見つけたというのです。
それが「ムネミオプシス・レイディ」でした。