海、河川に存在するプラスチックとその対応策
1907年に初めて使用されて以来、プラスチックは私たちの地球とその生態系に生息する全ての生物に対して、静かにその悪影響を強めてきました。
プラスチック廃棄物の約3分の1が自然界に投棄され、アメリカではわずか9%しかリサイクルされておらず、既に海洋には7500万トンから1億9900万トンのプラスチックが存在します。
海中のプラスチックはいたるところに分布しており、その大部分は循環する環流(ジャイア)の影響でそのループの内側に集中しています。
このようなジャイアとごみパッチ(ごみの集積箇所)は5箇所あり、最も有名なのは160万平方キロメートルに及ぶ太平洋ごみパッチであり、その他、インド洋に1つ、大西洋に2つ、太平洋にもう1つ存在します。
これらのごみパッチに巻き込まれた浮遊プラスチックは、より小さな破片に分解されるまで循環し続けるため、清掃はますます困難になります。
ビニール袋は、アカウミガメの大好物であるクラゲとよく間違えられたり、アホウドリはプラスチックの樹脂ペレットを魚の卵と勘違いしてヒナに食べさせ、その結果、ヒナはやがて餓死するか、臓器破裂を起こすことが生じています。
調査によると、太平洋ごみパッチに渦巻く大規模なプラスチックごみのほとんどは数十年前のものですが、最近生産されたプラスチックは海岸線に近い場所に残っていることが判明しています。
非営利団体オーシャン・クリーンアップの目標は、海に漂うプラスチックごみの90%を除去し、太平洋を「ごみのない海」にすることです。
その最新かつ最も機能的な浄化技術であるSystem-002は、深さ3メートル、大きなUの字を描く浮遊ネット(回収網)で構成されています。
しかし、見過ごされているのは、この回収網を引っ張るために使用される大型船が、かなりの二酸化炭素排出量を持っているということです。
化石燃料を動力源とする巨大な船で海水中の網を引きずることは、大気汚染と気候汚染に拍車をかけることになります。
彼らの環境影響評価報告書によれば、オーシャン・クリーンアップが運航する2隻の船は、1カ月の清掃活動で600トンの二酸化炭素を排出しています。
科学者たちは、この採集技術が、太平洋の表層に生息する生物相の一種であるニューストン(水表生物)に与える影響について懸念を表明しています(本研究は、オーシャン・クリーンアップによる委託研究として実施)。
カニ、タツノオトシゴ、クラゲ等は全てこのニューストンの一部であり、正常な環境下では生物群の中での食物連鎖に不可欠な存在として、様々な海洋生物群の間で重要な生態学的繋がりを構成しています。
例えば、ニューストンは大西洋のタラやサケなどの稚魚の育児場として機能し、アカウミガメのような絶滅危惧種の主要な食料源となっています。
しかし、これらニューストンは、不幸にもプラスチック廃棄物の浮遊域に生息していることが多くなります。
このことにより、混獲(プラスチックを回収する際に海洋動物を捕獲すること)の問題が生じ、浮遊するプラスチックは、魚やカメなどの海洋生物を巻き込まずに水からすくい上げるのが難しく、水中に投げ戻しても、これらの生物のほとんどは死んでしまいます。
魚網に絡まった生物は、傷つくことで、動きが制限されたり、採餌能力が低下したりすることで深刻な被害を受けることになります。
一方、世界の河川系に目を向けると、現在、年間115万トンから241万トンのプラスチックを海洋に排出し、海洋プラスチック汚染の約240万トンを占めています。
海洋プラスチック汚染の原因を抑制するため、オーシャン・クリーンアップはさらに、プラスチック汚染された河川の河口にインターセプターと呼ばれる太陽光発電船を配備しました。
河川のごみは水流に乗って中間的な集積所に一旦集められ、ベルトコンベヤーを経て船内に投棄され、ゴミ処理施設に運ばれます。
既に8基のインターセプターが、ドミニカ共和国、ジャマイカ、ベトナム、インドネシア、マレーシアの河川から220万ポンド以上のプラスチックを回収しています。
上記のとおり、非営利団体のオーシャン・クリーンアップは、海洋だけでなく、河川域でも最新技術を用いたプラスチックの回収を積極的に続けていますが、同時に環境や生物への影響についても自身による委託研究の結果を踏まえ、環境保護を考慮した回収技術の模索を継続しています。