自宅にいながらうつ病治療ができるように
従来のrTMS治療は20〜30日にかけて行われますが、チームは今回この治療期間を大きく短縮させるべき、加速型rTMS治療という新しい方法で、1日に4回、5日間集中的に治療する方法を実施しました。
臨床実験では、中国・貴州省の病院に入院しているうつ病患者75名を対象としています。
患者のうつ病レベルは「ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)」として知られる診断ツールで評価されました。
rTMS治療の標的とするのは、先ほど述べた「背外側前頭前野(DLPFC)」と「眼窩前頭皮質(OFC)」です。
そしてチームは患者を次の3つのグループに分けました。
1つ目はDLPFCとOFCの両方の脳領域に磁場を用いたrTMS治療を行うデュアル(二重)グループ。
2つ目はOFCには偽の磁場を与え、DLPFCにだけrTMS治療を適応したシングル(単一)グループ。
3つ目がDLPFCとOFCともに偽の磁場を与えるコントロール(対照群)です。
1回の治療セッションは約5分間(1日で計20分間)続けられ、治療終了直後の5日目から症状がどれだけ改善したかを評価します。
その結果、事前の予想通り、デュアル(二重)グループでは他の2つのグループと比較して、うつ病の症状が有意に改善していることが認められたのです。
うつ病スコアは通常、治療開始前から少なくとも50%低下した場合に「臨床的に有効性がある」と判断されます。
それを基準にすると、デュアル(二重)グループではほぼ半数(48%)の患者がわずか5日間の治療でこの水準をクリアしていました。
他方でシングル(単一)グループで、うつ病スコアの50%減をクリアしたのは5人に1人弱(18%)、対照群では20人に1人未満でした。
さらに4週間後のフォローアップ調査では、デュアル(二重)グループの61%の患者がこの水準をクリアしていました。
この結果を受けて、ケンブリッジ大学の精神科医であるヴァレリー・ブーン(Valerie Voon)氏はこう話しています。
「私たちが実施した迅速なアプローチはわずか5日間の治療セッションで、うつ病の症状を軽減できることを示しました。
これは自殺念慮を抱いている人など、重度で緊急の治療を必要とするうつ病患者にとって有用な可能性があります」
加えて、rTMS治療のもう一つの利点は将来的に自宅治療が可能になると期待できることです。
これにより継続的な通院治療を回避し、家にいながらうつ病を改善できることが期待されています。
今回の加速型rTMS治療が世界的に普及すれば、通院の煩わしさなどの負担を削減を実現し、個々の患者に合った治療プロセスが可能になるでしょう。
まだ自宅でできるわけでもないのにそういうタイトルはよくないのでは…
うつ病持ちにはうれしいニュースです。
全国で気軽にこの治療が受けられるようになるといいな。