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「カモになってない?」投資ブームのときこそ知っておくべきバブルの仕組み (5/6)

2025.04.19 12:00:29 Saturday

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バブルはリーマンだけじゃない:日本のバブル経済とITバブルの教訓

ここまでリーマン・ショックを通じて、現代の金融がいかに信用と欲望の上に成り立ち、それが一瞬にして崩れ得るものであるかを見てきました。

しかし、バブルという現象は決してひとつの時代、ひとつの国だけに限定されたものではありません。むしろ、形を変えながら何度も何度も歴史の中で繰り返されてきた「人間の欲望のかたち」とも言えます。

たとえば、1980年代後半の日本は、まさに“バブル景気”の最中にありました。

株も土地も毎年のように値上がりを続け、「地価は下がらない」「東京の土地を全部売ればアメリカが買える」とまで言われた時代です。

1989年に、三菱地所が約1200億円で買収したニューヨークのロックフェラー・センター
1989年に、三菱地所が約1200億円で買収したニューヨークのロックフェラー・センター / Credit:OLYMPUS DIGITAL CAMERA,Wikimedia Commons

銀行は土地を担保にして無制限にお金を貸し、企業も個人もそれを資産運用に回していました。つまり、「資産価格が上がることが前提」に経済が回っていたのです。これはまさに、アメリカの住宅バブルと同じ構造でした。違ったのは、アメリカでは住宅だったものが日本では“株”と“土地”だったという点です。

しかし1990年代初頭、日本銀行が金利を引き上げ、金融の引き締めに踏み切ったことで、バブルに浮かれていた空気は一変します。

当時、企業や個人の多くは、「土地や株は持っているだけで値上がりする」という考えのもと、大量の借金をしてでも資産を買い漁っていました。とにかく借金してでも早く買わなければ値上がりに乗り遅れて損をする、というムードが社会全体に広がっていたのです。

土地や株の高騰は、そうした借金の“担保”として機能していました。つまり借りる側は、「返せなくても土地を売れば借金を返済したうえでお釣りが来る」。銀行も担保となる土地が高額なので、「返済能力は気にせずに貸付できる」。その前提でどんどんお金が動いていたのです。

ところが日銀の金利引き上げによって、融資の条件が厳しくなり、「お金が借りにくくなる」「利子が高くなる」という状況が生まれました。

そうするとどうなるでしょう? 当然資産を買おうとする人が減っていきます。つまり土地や株の需要が下がるのです。すると、今まで右肩上がりだった土地や株の価格も徐々に頭打ちになり、やがて下がり始めます。

1億円だった土地が8000万円に下がると、銀行は「担保の価値が下がったので、貸したお金を一部返してくれ」と企業や個人に迫ります。これが「追い証」や「担保不足」という状況です。

すると企業や個人は資金繰りに追われ、現金化するために他の資産を売りに出します。買う人より売る人の方が多くなればどんどん値段は下がります。こうして売りが売りを呼ぶ悪循環に入り、市場は雪崩のように崩れていきました。

担保の価値が下がる。返済が迫られる。売却せざるを得ない。市場に売り物が溢れる。さらに価格が下がる──。

このスパイラルが、一夜にして「価値がふくらんでいた」資産を泡のように消し飛ばしたのです。

最終的に多くの企業が倒産し、個人は借金だけを背負い、国全体が長い不況へと落ち込んでいきました。これが、いわゆる日本の「バブル崩壊」の実像です。

目に見えた“お金”はあったのに、それが本当にあるのかどうか誰も確かめないまま、信用だけで回っていた世界。その信用が少しでも揺らげば、あっという間に崩れてしまうという現実を、私たちはこのときに思い知らされたのです。

これが、日本がその後「失われた10年(どころか20年、30年)」と呼ばれる長い停滞期に入っていく直接のきっかけとなりました。

さらに2000年前後には、今度はアメリカを中心にITバブル(dotcom bubbleが発生します。

インターネットという新技術の登場は、人々に巨大な夢を与えました。どんな小さなベンチャー企業でも「次のAmazonになるかもしれない」「Googleのように世界を変えるかもしれない」と思われ、利益も出していない企業の株価が何十倍、何百倍と膨れ上がっていったのです。

このときのバブルは、前例のないテクノロジーに対する過剰な期待、夢によって値段が決まっていたのです。

そして現実が追いつかないと分かった瞬間に、やはりその期待は崩れ去ります。2000年を境にNASDAQは暴落し、多くのIT企業が倒産、資金の流れは一気に冷え込みました。

こうしてバブルは形を変えて何度も繰り返されているのです。

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