恐竜は生態系の「エンジニア」だった
恐竜の絶滅が隕石衝突によるものであることは広く知られています。
今日のメキシコ・ユカタン半島付近に落ちた「チクシュルーブ隕石」は、地球全体にイリジウムを含む薄い層を残しました。
これは地質学者たちがK-Pg境界を特定する「イリジウム異常」と呼ばれる痕跡です。
チームは、ワイオミング州ビッグホーン盆地の地層から、このイリジウム異常を含む赤い粘土層を発見しました。
それは恐竜の地層と哺乳類の地層のちょうど境目にあり、恐竜絶滅と景観の変化が同時に起きたことを示していました。
【恐竜亡き後(上)と恐竜がいた頃(下)の景観のイメージ画像がこちら】
では、なぜ景色がここまで急激に変化したのでしょうか。
研究者は、現代のゾウがアフリカのサバンナを形作っている例を引き合いに出します。
ゾウは木を倒し、草原を保つことで生態系を作り替えています。
同じように、恐竜も地球規模で景観をコントロールしていた「エコシステム・エンジニア」だったと考えられるのです。
恐竜が消えたことで、地球の景色は一変しました。
森は繁茂し、川は蛇行し、風景はまったく異なる姿になったのです。
かつて恐竜が押し広げていた草原や湿地は、静かに森へと飲み込まれていきました。
この研究が示すのは、生命そのものが景観を変える力を持ち、絶滅という出来事が地球の顔を一瞬で塗り替えることもあるという事実です。