口に咥えた「最後の晩餐」は何だったのか?
史上最も直接的な“食事”の証拠
今回、古生物学者たちが最も驚いたのは、化石の下顎骨の間から発見されたワニの上腕骨でした。
この骨はメガラプトルの歯と密着し、噛み跡まで残っています。
これまでにもメガラプトル類が何を食べていたのか間接的な証拠はありましたが、獲物の骨が「口の中に」残ったまま化石化した例は非常に珍しく、まさに「最後の晩餐」の現場を見ているかのようです。
チームは「この恐竜がワニ類を食べている最中に死亡した可能性が高いが、偶然骨が紛れ込んだ可能性も完全には否定できない」と慎重に述べています。
しかし、骨が歯に接して噛み跡がついていることから、何らかの捕食または争いがあったと推定されます。
【最後の晩餐を咥えた新種メガラプトルの復元イメージがこちら】
気候変動と生態系の適応
ホアキンラプトルが生きていた当時のパタゴニアは、温暖で湿潤な氾濫原が広がる豊かな環境でした。
この時代、北部南米ではアベリサウルス類など別の恐竜が頂点捕食者だった一方、パタゴニアではメガラプトル類が王座を守っていました。
また、骨の内部には「気腔(きくう)」と呼ばれる空洞が広がっており、呼吸効率の向上や軽量化など、環境適応の証拠ともなっています。
ホアキンラプトル・カサリは、白亜紀末に起こる恐竜絶滅の直前に、南米パタゴニアで王者として君臨していたメガラプトル類の“最後の生き残り”です。
その口に残された「ワニの骨」は、6600万年前の大事件――小惑星衝突による大量絶滅――の間際まで、彼らが豊かな生態系の中で激しい生存競争を繰り広げていた証しといえるでしょう。