宇宙誕生から5億年後にある「赤い点」の正体とは?
2021年に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、人類史上もっとも遠い宇宙の観測を可能にしました。
今回の発見の舞台は、JWSTが観測した「CAPERS-LRD-z9」と呼ばれる、ごく小さくて赤い点――通称「リトル・レッド・ドット(Little Red Dot)」と呼ばれる謎の銀河です。
このCAPERS-LRD-z9が存在するのは、今から約133億年前、ビッグバンのわずか5億年後の宇宙です。
この時代は、宇宙が現在のわずか3%しか経過していなかった時代にあたります。
私たちの銀河系(天の川銀河)はまだ影も形もなく、星々もやっと生まれ始めた頃です。
「リトル・レッド・ドット」という不思議な天体は、JWSTが観測するまでその存在すら知られていませんでした。
ハッブル宇宙望遠鏡で見える普通の銀河とは全く違う、赤くて小さい、でも驚くほど明るい点が宇宙の最果てに散らばっていたのです。
この“赤い点”がなぜこれほど明るいのか、当初は天文学者たちも首をかしげました。
もし星の光だけでこれほど明るいなら、途方もない数の星が集まっているはず――しかし、宇宙誕生から5億年後の時代にそんなにたくさんの星が生まれているとは考えにくいのです。
では、一体この“赤い点”の正体は何なのか?
その謎を解く鍵となったのが「ブラックホール」でした。