400年後のアメリカと比較
研究者らは、同様の方法が用いられたアメリカ南北戦争当時の医療との比較をおこなった。当時の戦場医師はインカ時代の穿頭と同じようにグルービングをおこなっていた。しかし患者の46~56%は術後に死亡していたことが分かった。これはインカ時代の17~25%と比べて非常に高い数字である。
一方、両時代ではそもそも頭の怪我の程度が違うといった指摘もある。確かに戦争の中で銃弾などによって受けた頭のキズは感染症などを引き起こしやすく、インカ時代のものとは質が違う可能性もあるだろう。
しかしそれでも当時の穿頭の成功率の高さは驚くべきものだ。西洋では当時、手術道具は水洗いして拭くだけで使い回されていたという。しかし当時のペルーに病院はなく、手術はすべて野外、道具も使い捨てだったといわれている。このようなことも、生存率に関わっているのかもしれない。