- 平均的な110歳は平均的な100歳よりも健康であり、寿命のパラドックスが起きている
- 110歳の細胞を万能化させることで、謎を解明する研究材料を確保した
- 不老不死までは意外に道は長くないかもしれない
人の寿命は無限に伸ばせる。
そんな可能性を示す研究結果がアメリカの研究機関から発表されました。
114歳の女性の体から取り出した細胞を「iPS細胞(万能細胞)」に変化させたところ、細胞の寿命の指標となるテロメアが、0歳の赤ちゃんレベルまで回復していたのです。
これまでもiPS細胞化することによって細胞が若返ることが報告されていましたが、110歳を超える老人で実証されたのは今回が初めてです。
しかし今回に研究者の目的は、単なる若返り技術の限界を試すことだけではありませんでした。
110歳を超えた人間の多くは、一般的な100歳の人間よりも、遥かに健康であることが知られており、この寿命の限界値付近では、奇妙な健康レベルの逆転が起きていたのです。
これまでは、何が原因となって、110歳の人間が10歳以上年下の人間より高い健康を維持していたかは謎でした。
また研究対象とする人間も極めて少数しか存在せず(世界で28人だけ)、健康と言っても110歳を超える老人に対して安易に臨床試験はできません。
しかし、今回の研究によって114歳の細胞を万能化させて増殖することで、理論上、無限の研究材料を確保できたことになります。
100歳より健康な110歳は、遺伝子にどんな秘密を持っているのでしょうか?
研究内容はサンフォード・バーナム・プレビーズ・メディカル・ディスカバリー・インスティテュートのJieun Lee氏らによってまとめられ、2月27日に学術雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X20303661?via%3Dihub#!
若返りに年齢制限は存在しないことが判明
これまでの記録で、110歳を超える人間は平均的な100歳の人間よりも遥かに健康であることがしられていました。
110歳を超える人間は加齢が遅いだけでなく、アルツハイマー病やパーキンソン病といった脳の病気だけでなく、他のあらゆる加齢性の疾患に対して奇妙な免疫を持っていたのです。
しかし、原因は謎に包まれていました。
そこでLee氏らをはじめとする研究者たちは現存する110歳を超える28人のうちの3人から、貴重なリンパ芽球をわけてもらい、万能細胞へと再プログラムを試みました。
結果、驚いたことに、110歳を超える人間の細胞は、他の大多数の人間と同じくらい簡単に万能細胞に変化させることができました。
また万能化したことで、テロメアが延長され、0歳の赤ちゃんと同じレベルまで若返りが確認できました。