シャコのナノ粒子はあらゆる人工材料を凌ぐ「天然サポーター」!
さらに、この無機物と有機物の組み合わせが、拳の弾性や剛性を高める鍵となっていました。
実験で、低エネルギーのインパクトを与えてみると、コーティングの結晶構造は、ほとんどマシュマロのように変形し、外力がなくなると元に戻り始めています。
一方で、高エネルギーのインパクトを与えてみると、ナノ粒子の結合が壊れて、結晶構造を失くしてしまいます。ところが、硬い結晶構造を一時的に失くすことで(アモルファス化)、クッションのようになり、エネルギーを分散させていました。
この特殊な構造は、柔らかい有機物と硬い無機物の組み合わせによって生まれ、剛性を失うことなく、エネルギーの吸収・分散特性を獲得していたのです。
キサイラス教授は、これについて「金属やセラミックといった大半の人工材料をはるかに凌ぐ構造」と指摘します。
つまり、シャコは最強のパンチ力だけでなく、高性能の自家製サポーターまで備えていたということでしょう。
シャコパンチのコーティング構造は、自動車や航空機、スポーツ産業における新素材の開発に応用できるとのことです。
研究の詳細は、8月17日付けで「Nature Materials」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41563-020-0768-7