食品廃棄物の活用問題
大勢の人々に安定して食料を供給するため、現代社会では食べ物が大量生産され、大量に廃棄されるという状況が生まれています。
これは食品ロスという言葉でよく耳にするため、問題に感じている人も多いでしょう。
食品ロスというのは、食品廃棄物のうち、本来食べられるのに廃棄されてしまう「可食部」のことを指します。
この他に、食品廃棄物には野菜や果物の皮、種、芯、肉や魚の骨や鱗のように、食べられない「不可食部」という分類が存在します。
環境省の報告では、日本の2018年の食品ロスは約600万トン、不可食部の廃棄は約1930万トンにのぼり、このうち約5割は肥料化、飼料化されているものの、約4割は焼却、埋め立て処理されていると試算されています。
5割も再利用されているんだ、と思う人もいるかもしれませんが、これもいろいろと問題を生んでいます。
飼料化、肥料化の活用は、製品単価が低いため、ここから収益を上げることが困難です。
また、堆肥については年間8300万トン発生する家畜糞尿も活用されていて、実は農地では肥料が多すぎるために窒素過多という問題が発生しています。
窒素過多は、作物の育成をおこなっても土に栄養分が残ってしまう状態です。
土に残った栄養分は、雨などによって水に溶けて河川、湖沼へ流れ出し、藻類などが繁茂する富栄養化現象を引き起こします。
また、硝酸性窒素が多い飲用水を利用すると、乳児にブルーベビー症候群と呼ばれる病気を発症させることもあります。
廃棄食品の肥料化も、結局は多すぎる肥料や堆肥によって環境破壊を引き起こす原因になってしまうのです。
しかし、余るからといって、食品の生産や供給をしぼるというのは、現代社会においてあまり実現可能なプランとはいえません。
無理なプランを押し付けても、それは問題の解決とはいえないので、食品廃棄物問題を解決するためには、飼料化、肥料化以外の方法で、さらに高付加価値をつけて収益にもつながるような新しい活用方法を探す必要があるのです。