乾いたスパゲティが2つに割れない理由は増幅された振動のせいだった
スパゲティはかつて物理学者を何十年にも渡り悩ませてきました。
両端を持ってパキッと音がするまで曲げると、常に3つ以上の破片に割れるからです。
そこでフランスのUPMCの研究者たちはこの奇妙な現象を真面目に調べることにしました。
具体的には上の図のように、スパゲティの一端を壁に固定しもう一方を引っ張って曲げる実験を繰り返しました。
すると意外な事実が判明します。
力をかけて曲げていたときには折れなかったスパゲティが、力を解放してビヨンビヨンと反動で振動しているときに割れるケースが多発したのです。
なぜ負荷が最も強い時に折れずに、解放によって折れたのか?
謎を解明するため研究者たちはシミュレーションを元に計算しました。
結果、曲がっていたスパゲティが元に戻るときに生じる振動波が、固定されていた方の端に到達すると反射し、振幅(振動の幅)を大きくさせていることが判明しました。
また、増大した振幅によってスパゲティにかかる負荷(曲げ率)は、力を入れている時よりも大きく「割れ」につながっていたことが判明します。
この結果をスパゲッティを曲げて折る現象に当てはめると、追加の断片ができる理由が見えてきます。
両手に力をかけてスパゲッティを曲げていくと、まず中央付近で「割れ」が生じて、実験と同様の力が解放された状態になり、割れ目からスパゲティを固定している手の部分に向けて振動が発生します。
そして振動が固定された手の部分で反射して振幅を増大させることで、スパゲッティの耐えられる負荷を突破。
結果として追加の断片を生成していたのです。
破損した部分から発生した振動が増強される仕組みは「スナップバック」として呼ばれており、橋や建物などを崩壊させる原因としても知られています。
身近なスパゲッティが2つに割れない現象が建築学にも通じているという事実は多くの人々の興味を引き、研究は翌年のイグノーベル賞を受賞します。
しかし研究者たちがスパゲティにかける情熱は、原理を解明しただけでは収まりませんでした。
アメリカのMITの研究者たちは振動を抑制するような割り方を行えば、スパゲティを綺麗に2つの割れると考え、新たな研究をはじめます。
鍵となったのはスパゲティに加える「ひねり」でした。