死んだふりを操る遺伝子を発見
研究を行うにあたって、農大の研究者たちが目をつけたのが甲虫(コクヌストモドキ)でした。
コクヌストモドキは米や小麦に被害を与える害虫として以前から農業分野で研究対象になっています。
また都合がいいことに、コクヌストモドキの性質を長年にわたって調べる過程で、同じ種にもかかわらず、少しでも刺激すると「しんだふり」をする家系と、どんなに刺激を与えても「しんだふり」をしない家系が存在していたからです。
通常のコクヌストモドキは適度な刺激でしんだふりをすることが知られており、これら2つの家系は、ある意味で変種でした。
そこで研究者たちは2つの家系のDNA配列を調べ、通常のコクヌストモドキとの間との違いを調べました。
結果、少しの刺激で「しんだふり」をする家系では3243個、どんなに刺激しても「しんだふり」しない家系では844個のアミノ酸が異なる変異遺伝子がみつかりました。
また変異した遺伝子がどんなものかを調べた結果、ドーパミン代謝にかかわる遺伝子群が最も大きく変化していることが判明しました。
同じ昆虫であるショウジョウバエにおいてドーパミンは覚醒と睡眠にかかわることが知られています。
またドーパミン意外にも新たに、カフェイン代謝、概日リズム制御、寿命制御、酸化還元酵素などもかかわっていることが発見されました。
このことは「しんだふり」が複数の仕組みが関与する、非常に複雑かつ急速な反応であることを示します。