ハチは純粋に「遊び」を好むことを証明
次の実験では、「餌場」「遊び場」「巣箱」の順番でトンネル接続をしました。
このとき、真ん中の「遊び場」は、自由に転がせる玉の入った「黄色の部屋」と、何も入っていない「青色の部屋」とで入れ替えられるようにしています。
実験では、黄色と青色の部屋を20分ごとに計6回入れ替え、対象とする42匹のマルハナバチに「黄色の部屋=玉あり」を学習させました。
また、餌場・遊び場・巣箱は、先ほどと同様、自由に行き来できるようにしています。
この学習訓練を終えた後、チームは、巣箱からトンネルを介して、黄色と青色の2つの部屋のどちらに入るかを選択できる実験アリーナを用意しました(下図)。
このとき、2つの部屋の中はハチには見えず、入口の色だけが分かるようにしています(ちなみ、どちらの部屋にも玉は入れていません)。
その結果、マルハナバチの多くは、先の実験で玉が入っていた「黄色の部屋」に入っていったのです。
これは明らかに、「黄色の部屋では玉転がしができる」ことをハチに連想させていると思われます。
この設定は、ハチが遊び以外の目的で玉転がしをするという考えを排除するものでした。
また、今回の実験では、若いハチの方が年配のハチよりも玉転がしに熱心で、玉を転がす回数も多いことが示されました。
これは、ヒトを含む哺乳類や鳥類において「子どもが最も遊び好きである」という広く見られる傾向を反映しています。
これについて、研究チームは「若いハチの発達中の脳が、筋肉の協調に関わる神経細胞の結合を強めるなど、遊び行動によって何らかの恩恵を受けている可能性がある」と指摘します。
今回の結果を受けて、研究主任のサマディ・ガルパヤージュ(Samadi Galpayage)氏は、次のように述べています。
「マルハナバチは他の動物と同じように、遊びによって、ある種のポジティブな感情を経験しているのかもしれません。
このような発見は、昆虫の感覚や福祉に関する私たちの理解に影響を与え、地球上の昆虫をこれまで以上に尊重し、保護する一助となるでしょう」
研究チームは現在、玉転がしによって若いハチの能力(たとえば、花から効率的に蜜を収穫できる能力)が向上するかどうかを調査しているとのことです。