「IKEA効果」が発生している時、記憶に関する脳活動が活発になっていた
実験では、学生30名に6つのIKEA製品の検査と評価を行ってもらっています。
このとき3つの製品は組み立て難易度が同程度で学生が自分で組み立て経験のある製品(DIY商品)、他の3つの製品はアンケートで学生が組み立てたことのない製品(Non-DIY商品)でした。
学生にはこの6つの製品をそれぞれ1分間検査してもらい、6つの製品に対してそれぞれ支払っても良いと思う最大価値(支払い最大価値:WTP)を尋ねました。
そしてこれらの実験の際に、光を用いた脳機能イメージング法「機能的近赤外分光分析法(fNIRS)」によって、脳活動の変化を可視化しました。
実験の結果、24名でIKEA効果の発生が確認でき、DIY商品の方がNon-DIY商品よりもWTPが有意に高いという結果が得られました。
そして彼らがWTPを評価している時、いずれの条件においても「右腹外側前頭前野/前頭極」で強い活動が見られました。
この領域は経済的意思決定と関連することが知られており、「WTPを評価すること」自体が、この領域の活動を高めたと考えられます。
一方、「左背外側前頭前野/前頭極」と「左腹外側前頭前野」では、DIY商品を評価している時だけ、強い活動が見られました。
これらの領域は、「過去の記憶の想起」や「記憶を価格などに変換」する際に活動すると考えられています。
このことから、まずDIY体験中に商品への愛着が生まれ、次に商品の価値を評価する際にDIY体験の記憶が呼び起こされ、これらが商品の価値を高めたと推測できます。
私たちが自作したIKEA製品を眺めて「やっぱり良い家具だな」と深い満足感に浸っている時、脳が活発に働いて「コト消費」の価値を付加していたようです。
今回、コト消費と関連する「IKEA効果」の認知メカニズムを科学的に解明できました。
今後、fNIRSを用いた実験デザインを活用した研究を重ねることで、他のタイプの「コト消費」つまり「体験」の価値を定量化していけるかもしれません。