短い昼寝が健康によくて、長い昼寝が悪い理由は?
分かりやすく定義しておくと、15〜30分は短い昼寝、30分以上が長い昼寝となりますが、この30分のラインで健康効果に大きな差が出るのは、私たちの睡眠サイクルに理由があります。
ご存じのように、私たちの眠りのステージは「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」に分けられます。
レム睡眠は脳が活発に動いている浅い眠りで、この間に情報の整理や記憶の定着が行われています。夢を見るのもこの時間帯です。
ノンレム睡眠は大脳が休息する深い眠りで、脳と肉体の疲労および機能回復の働きをしています。
私たちの眠りはまずノンレム睡眠から入り、一気に深い眠りに陥ります。
入眠から約1時間後には徐々に眠りが浅くなり、レム睡眠へと移行。その後はこれを約90分の周期で5〜6回繰り返します。
つまり、私たちは眠りに落ちた最初の30分間は大脳を休めるノンレム睡眠にあり、そこで脳や体に蓄積された疲労がクリアされているのです。
しかし、私たちが昼寝をするとそんなに深い眠りに落ちている感覚はないでしょう。
その理由は、ノンレム睡眠には4つのステージがあり、30分を超えるとステージ3のより深い眠りに陥ってしまうためです。
ステージ3以降の深い眠りに入ると目覚めは非常に悪くなり、覚醒後に体はだるさを感じ、脳は意識や記憶があいまいになる見当識障害を起こしやすくなるのです。
これを「睡眠惰性(スリープ・イナーシア)」と呼び、逆に脳と体の疲労感が高まってしまいます。
だからこそ、15〜30分の短い昼寝が最も効果的なのです。
さらに中国・山東大学の研究(Sleep Medicine Reviews, 2022)によると、60歳以上では30分を超える長い昼寝が心血管疾患のリスクを高めることが指摘されています。
特に1日に1時間以上の昼寝をしている高齢者は、血圧の上昇・高血糖・体脂肪の増加・コレステロール値の異常が発生しやすくなっていたという。
しかし短い昼寝(パワーナップ)は年齢や性別を問わず、すべての人々に健康メリットがあると考えられています。
お昼に15〜30分ほどのパワーナップ習慣を取り入れることで、午後を活気に満ちた時間にできるかもしれません。